誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~

“自力SI”の時代、SIerはどこでビジネスをするのか - (page 3)

伊佐政隆

2017-01-05 07:00

顧客を“業務のプロ”としてシステム開発のチームに引き込む

四宮:ライザップは、お客様がやせるためにプロのコンサルタントがしっかりサポートや指導をするそうですが、ここではお客様が必死でやらないと意味がないですよね。いちばん頑張っているのは、実はお客様。システム39も同じです。

伊佐:なるほど。システム39のモデルでは、お客様にどういった「頑張り」を求めることになるのでしょうか。

四宮:初回で必ずお話するのですが、システム39の場合、お客様はシステム開発を丸投げすることはできません。お客様がどんな問題意識を持っているのか、どういった目的でこのサービスを選択しているのか、意思をはっきりしてやっていかないと絶対いいものはできない。システム39の対面開発では、お客様は「業務のプロ」としてシステム開発に参加することになります。

伊佐:お客様とチームになって開発するわけですね。従来のシステム開発だと、利用するユーザーは仕様書を見ながら納品を待つばかりだった。しかし、対面開発であれば、ユーザーはシステム開発の過程から参加できて、自分の目線でどんどんシステムを良くしていける。システム開発の場において、ユーザーが重要な役割を担っているのですね。 サイボウズは、チームワークの必須要素として「チームのビジョン」と「それぞれの役割」を掲げています。「業務にはびこる問題の解決」という理想を達成するために必要な役割が、システム化のプロや業務のプロなのだとしたら、対面開発はお客様側に役割を与えて、システム開発に今までなかったチームワークを機能させているのですね。。


四宮:対面開発は、お客様も自分たちが開発に関わっている感覚を得られるので、達成感や満足感があります。また、今後システムを開発したいとなったときに、自分たちでできるかもしれないと思える。

伊佐:でも、お客様が自分でシステムを開発して問題解決することを覚えたら、継続ビジネスとしては難しくなるのではないでしょうか。

四宮:そんな風に周りのSIerから言われることもあります。保守などをやるのか、儲からないんじゃないのかって。でも、それは正直視野が狭いなと。 システムを作ることで稼ごうと考えているからその発想になってしまうのです。kintoneのビジネスユーザーが増えていけば自ずと相談は増えてきますし、満足度の高いサービスを提供できればリピートは必ず出てきます。

伊佐:自分でできるとはいえ、やっぱりプロに頼みたいと思う部分は必ずありますしね。

四宮:SIer側の意識改革は必須です。地方でもこのビジネスモデルを紹介しているので、同じようにやりたいというSIerはたくさん出てきています。しかし、やっている側の意識が“システムを作る”ところにとどまってしまうと、システム39のビジネスは失敗するでしょう。

伊佐:作って納めないと評価されないという、評価の慣習を変える必要もあります。SIのゴールをシフトすること、プロセスにおける評価ポイントを変えること、この2点を押さえれば、さまざまなSI企業がチャレンジできるビジネスモデルです。

システムへの投資に可能性を感じてもらいたい

伊佐:今後、ジョイゾーはどういった方向へ進むことを考えていますか?

四宮:直近では、経営層の方々にITの可能性を感じてもらう取り組みを進めたいと考えています。システム開発を、費用ではなく投資だと考えてもらいたい。

伊佐:ITは、まだまだ経営層の仕事を手助けできている部分が少ないですし、敬遠されてしまうんですよね。システムなんてわからないよと。でも対面開発であれば、システム開発経験のない人も「意外と作れる」と実感できる。皆が正しくITの可能性を理解して、そのメリットを享受できる未来にしていきたいですね。

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