日本株展望

新年相場が向き合う世界の政策不確実性

ZDNet Japan Staff 2017年01月06日 11時10分

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今日のポイント

  1. 世界経済を主導する米国の景況感や期待インフレ率は上向いており、昨秋からの「グレートローテーション(債券から株式への資金シフト)」は新年に持ち越されつつある
  2. 2017年の相場も幾度かは「乱気流(リスク顕在化)」に見舞われる可能性。米国と世界の経済政策不確実性指数は急上昇。政治的な混乱や政策をめぐる不透明感の台頭に要注意
  3. 欧米と比較して安定した国内政治や政策の継続性は海外勢による日本株の買い要因。12月の鉱工業生産指数上昇で国内景気は2年8カ月ぶりに「基調持ち直し(経産省)」

 これら3点について楽天証券経済研究所シニアグローバルストラテジストの香川睦氏の見解を紹介する。

米景況感の改善と期待インフレの上昇

 米国を筆頭とする世界の景況感改善を背景とする米国株高、円安、国内株高も、2016年末に一服商状がみられた。ただ、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の改善トレンドが終わったとみるのは時期尚早と思われる。米国では、調査会社Conference Boardが12月27日に発表した消費者信頼感指数(12月分)が2001年8月以来15年4カ月ぶりの水準まで上昇した。

 また、債券市場で計算される「期待インフレ率」は、米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%に迫ろうとしている(図表1)。米国の国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費のマインド改善とインフレ期待の上昇は、「債券売り、株式買い」の継続を示唆しているようにみえる。米国債券の利回りは上昇傾向をたどりやすく、為替のドル高、円安を介して日本株堅調の追い風となりそうだ。

図表1:米消費者信頼感指数と期待インフレ率の向上

楽天証券経済研究所作成
(注:消費者信頼感指数=Conference Board発表、期待インフレ率=U.S. Break Even Rate(5 yrs)) (出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2012年1月~2016年12月))

新年相場は経済政策の不確実性に揺れやすい

 上記した景況感改善に加え、米Trump新政権がリフレ政策(インフレ誘発的な財政拡張政策)を導入していくとすれば、2017年もリスクが相対的に高い株式のリターンが安全資産とされる債券のリターンを上回ると考えられる。ただ、2016年と同様、2017年も幾度かは「乱気流(リスクの顕在化)」に見舞われ、市場が乱高下する展開に直面しそうだ。その発端となりそうなのが、政治的な混乱や経済政策をめぐる不確実性の高まりと考えられる。

 図表2が示す「経済政策不確実性指数(Economic Policy Uncertainty Index)」は、米スタンフォード大学などの教授が開発した指数で、米国や世界の経済政策をめぐる不確実性の度合いを示す指標だ。同指数は、主要メディアに掲載された関連記事における「不確実性(Uncertainty)」やそれに類する言葉を集計したもので、一般社会における経済政策をめぐる不透明感の度合いを示す物差しとして注目されている。

図表2:米国と世界の経済政策不確実性指数

楽天証券経済研究所作成
(注:経済政策不確実性指数(Economic Uncertainty Index)=The Baker, Bloom and Davis Research) (出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2012年1月~2016年12月))

 米国の経済政策不確実性指数は、11月の大統領選挙の結果を受け、2013年以来の水準まで上昇した。また、世界の経済政策不確実性指数(主要各国のGDP規模で加重平均した指数)は、2015年のチャイナショック(中国危機)発生時に欧州債務危機(2012年)当時の水準を突破。2016年はBREXIT(英国のEU離脱をめぐる国民投票)と米大統領選挙をめぐる不透明感で1997年以来の水準に上昇した。

 相場に不透明感は付きものだが、2017年は世界の政治情勢や経済政策をめぐる不確実性が市場変動に繋がるリスクに注意を要する。

 具体的な要因としては、(1)Trump次期米大統領によるリフレ策の実効性や規制緩和への期待が頓挫する、(2)同大統領が保護貿易主義や外交面の排外的孤立主義(米国第一主義)に傾倒する、(3)2017年に予定されている欧州主要国(オランダ、フランス、ドイツ)での選挙で極右勢力が躍進し、EU統合や通貨ユーロをめぐる不安が高まる、(4)米国の外交方針変更を契機に、中国、ロシア、中東との地政学的バランスが崩れる、などが懸念材料として挙げられる。

 こうしたリスクが顕在化すれば、市場の先行き警戒感が強まり、事態の悪化次第では株式のリスクプレミアムが上昇する(株式の収益期待に下方圧力が掛かる)可能性が否定できない。当面は、大統領就任(1月20日)後のTrump氏の言動や欧州の政治情勢に目配りが必要となりそうだ。

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