本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ドイツSUSEのMichael Miller プレジデントと、日本ヒューレット・パッカードの本田昌和 データセンター・ハイブリッドクラウド製品統括本部長の発言を紹介する。
「オープンソース技術でCIOの悩みに応えたい」 (独SUSE Michael Miller プレジデント)
独SUSEのMichael Miller プレジデント
SUSEのLinux関連事業を国内で手掛けているノベルが先ごろ、SUSE製品のユーザーを対象としたプライベートイベント「SUSE Open Forum Japan 2016」を都内で開催した。冒頭の発言は、同イベントで基調講演を行うために来日したSUSEのMichael MillerプレジデントがCIOに向けて語ったものである。
Miller氏は基調講演でまず、企業のCIOが現在抱えている課題について、「企業が技術に投資する費用のうちIT向けは10%にすぎない。しかもそのうち70%が保守など社内システムの現状維持に費やされている。一方、79%の経営者はイノベーションを重要課題として挙げており、CIOとしては現状維持とイノベーションをどのようにバランスよく手掛けていけばよいか、頭を悩ませている」と説明。「SUSEはそうしたCIOの悩みに、当社ならではのオープンソース技術で応えたい」と語った。
その中核となるのが、商用Linuxディストリビューション「SUSE Linux Enterprise」である。SUSEによると、SUSE Linux Enterpriseは、メインフレームやSAP HANA、ハイパフォーマンスコンピュータ(HPC)向けなど、ハイエンドLinux市場で5割~8割の高いシェアを獲得しているという。
また、Linuxと同じオープンソースのクラウド基盤構築ソフトウェア「OpenStack」の展開にも注力。同社はOpenStackの推進プロジェクト「OpenStack Foundation」のプラチナメンバーとして積極的に活動しているほか、オープンソース技術の推進企業として多くの開発コミュニティに貢献している。
Miller氏の基調講演で、筆者が特に印象深かったのは「Always Open Open」というSUSEの理念だ。同氏によると、Openを重ねて表現しているのは「オープンソース技術を提供するだけでなく、多様なユーザーニーズに対して多くのパートナー企業とともに柔軟に対応できるオープンなエコシステムを整えているからだ」という。
こうした理念のもと、SUSEの最近の動きでとりわけ注目されたのは、2016年11月に相次いで発表した米Hewlett Packard Enterprise(HPE)と富士通との協業だ。HPEとは同社のクラウド関連資産の買収をはじめとした戦略的提携、富士通とはオープンソース製品の開発・マーケティング・販売にわたる広範囲な提携を結んだ。SUSEにとってはいずれも今後の事業展開に大きな弾みとなる協業である。