展望2020年のIT企業

東南アジア市場の開拓に注力するITベンチャー

田中克己

2017-01-19 07:30

 海外で活躍するIT企業の日本人経営者は極めて少ない。国内に大きな需要があり、海外市場を開拓する必要に迫られなかったこともある。世界で売れるソフトやサービス商品を持っていないからかもしれない。そんな中で、オンライン決済システムを提供するOmiseは、タイを拠点に東南アジア各国へビジネスを拡大させている。

オンライン決済システムを展開するOmise

 Omiseの創業者で、最高経営責任者(CEO)の長谷川潤氏は、スタートアップ5社を立ち上げる中で、「日本の経営スピードやベンチャーキャピタルのエコシステムに、強いストレスを感じた」という。そこで、タイにいる友人Ezra Don Harinsut氏(現COO兼共同創業者)に相談したところ、「Eコマースがアジアで大きく伸びる」と知り、2013年6月にOmiseをタイに設立し、Eコマース用プラットフォームの開発に着手した。

 同時に、タイなどで使える決済システムの情報収集を開始したところ、「導入に3カ月かかる」など、Omiseの要求を持たすものが見つからなかった。自社開発を決断するが、長谷川CEOらはEコマース用プラットフォームと決済システムの2つのビジネスを手掛けるのは難しいと思い始めた。決済システムの市場は大きく、現地のライセンスやコンプライアンスなども求められるからだ。

 Omiseは、ほぼ出来上がっていたEコマース用プラットフォームから決済システムにリソースをシフトし、約2カ月かけて開発したプロトタイプを2014年9月に発表する。利用者を募る一方、決済システム提供に必要なライセンスを取得し、2015年1月にタイで正式にサービスを開始した。

 利用者は当初のスタートアップや中小企業に加えて、最近はホテルや携帯電話会社、航空会社など大手企業へと広がっている。加盟店が3000社超、主要取引先銀行が15行、システム連携/業務提携先が6社に拡大する(2016年11月)。

 決済システムの提供地域も広げている。タイで開始したところ、隣国から「うちの国ではやらないのか」と強い関心を持たれたこともあって、2017年1月にインドネシア、シンガポールでサービスを開始する。現在、両国のほか、タイや日本などサービス提供地域にそれぞれ現地法人を、シンガポールに持ち株会社に置く運営体制である。ただし、システム開発とオペレーションの中心はタイで、長谷川CEOも約4割は同国にいる。

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