筆者のようなテクノロジライターには、ビッグデータ関連企業から次の年の業界動向に関する予想が多数送られてくる。これらを集めて通読し、何が述べられているかを調べるのは楽しい作業だ。予想の中には、完全に矛盾していて疑わしいものもあれば、2つ以上の予想が互いに補強し合って、分析に対する信頼度が高まっているものもある。
知見の抽出
筆者が好んでやるのは、複数の予想を結びつけ、全体像を理解するための分類軸となるテーマを探すことだ。この作業を行うと、表面的には矛盾して見える項目に、より深いレベルで光が当たることもあるし、一定の共通認識が浮かび上がってくる場合もある。もちろん、共通認識となっている予想が必ず当たるとは限らないが、少なくとも業界のリーダーが考えていることや、今後のトレンドがどのようになりそうかということについて多角的に把握することができる。
2017年に向けての予想では、業界の変化が大きく扱われている。これには、アナリティクス単体から、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、機械学習を利用するケースを考慮した、より応用的なシナリオへの移行が含まれる。狭い領域に特化したスキルセットやテクノロジから総合的アプローチへの移行や、アナリティクス自体に対するアナリティクス技術の適用についても言及されている。
人工知能は新しいものではない
まず、人工知能(AI)の話題から始めよう。MapR Technologiesの創立者であり同社のエグゼクティブチェアマンを務めるJohn Schroeder氏は、AIが「再び流行している」という言い方をしている。最近になってAIが流行していることは確かだが、「1960年代にRay Solomonoff氏がAIの数学的理論の基礎を確立」し、「1980年にスタンフォードで全米人工知能学会(AAAI)の最初の全米カンファレンスが開催され、理論がソフトウェアに適用された」というSchroeder氏の指摘は正しい。
昔と今で違っているのは、データの量が桁違いに大きくなっていることだ。これは、モデルのトレーニングに以前よりも多くのデータを使用でき、より正確な結果が得られることを意味している。AIのアルゴリズムも改良されており、顧客の関心も30年前より大きく前進している。
SplunkのIT市場担当シニアバイスプレジデントを務めるRick Fitz氏が、2017年は「アナリティクスが主流になる」年であり、「より多くのITプロフェッショナルやエンジニアは、機械学習やオートメーション、予測的アナリティクスのような新しい技術に依存し、その裏でより高いレベルのことに取り組むようになるだろう」と述べているのは、これが理由かもしれない。
自動化と雇用
AIが一般的になれば、人間は機械に職を奪われるのだろうか。この問題は、今や明らかに政治的な課題の1つになっている。Workdayでユーザーエクスペリエンス担当シニアバイスプレジデントを務めているJoe Korngiebel氏は、「機械が人間に取って代わることはないが、今は重要な変曲点を迎えている」と見ている。
これは何を意味するのだろうか。SAPのパートナー企業であるDolphin Enterprise Solutions Corporationで最高技術責任者(CTO)を務めるVishal Awasthi氏は、「ボットで代行可能な定常業務は廃止される」と予想しているものの、これまで主にその種の業務を行ってきた労働者は、「自分の役割を、やはり一般的な知能を必要とせざるをえない業務を行う知識労働者に転換することができる」と付け加えている。