次世代ITに呼応する宇宙ビジネス

次世代ITに呼応する宇宙ビジネス--花開くか日本市場 - (page 3)

佐藤将史 2017年01月13日 07時00分

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なぜ「宇宙ビジネス」が拡大しているのか

 では、宇宙ビジネスがなぜ近年注目されているのか。そのけん引役は、米国を中心とした、2010年以降の世界的な宇宙ベンチャーブームである。宇宙産業市場の調査機関であるTauri Groupによれば、2000年以降、宇宙ベンチャーは合計133億ドルの投資を集めているが、なんと、そのおよそ3分の2はここ5年間に集中しているという。

 米国では毎年数十~100超の宇宙ベンチャーが生まれ、日本でも2010年前後を境に宇宙ベンチャーの創業が相次いでいる(図表3)。現在、世界には数百社とも1000社とも言われる規模で宇宙ベンチャーが存在している。


日本でも2010年前後を境に宇宙ベンチャーの創業が相次いでいる(図表3)

 この宇宙ベンチャーブームの要因については、今後の記事の中で全体を整理し紹介をしていくが、その一つとして、ICT(情報通信)産業の発展によるところが大きい。ICT関連の各種機器や通信技術が高度化かつ小型化していく中で、これまで技術面・コスト面でハードルの高かった宇宙分野への汎用ICT技術の転用が進み、「宇宙の低コスト化」が実現した。これによって、小型衛星を大量に打ち上げ、高速データ通信によって地上とつなげることが実現しつつある。

 Facebookや、Googleから出資を受けたSpaceXなどが数百~数千の小型衛星を打上げる「コンステレーション計画」を打ち出しているのは、その流れの一環と言える。

 ICTによって宇宙産業が受けているもう一つの恩恵は、リモセン画像を中心とした衛星データに対して、クラウド技術、ディープラーニング(機械学習)などの技術を絡ませることで、膨大な画像データを高速処理し、各種産業のユーザーが使い易い、理解しやすい形に加工できるようになったことである。米国では、Orbital InsightやDescartes Labsと言った、衛星画像のAI解析ソリューションに特化したベンチャーが、民間企業を顧客としたビジネスを既に展開している。

2017年、日本の宇宙ビジネス・ラッシュ

 このように新しい宇宙ビジネスが世界的に生まれている中、この2017年は、日本の宇宙ビジネスにとって夜明けとも言える1年になる。日本の宇宙ベンチャー各社が、この2017年に次々と宇宙空間にロケット・衛星などを打上げ、ビジネスのベースとなる自社インフラの整備に踏み出す。

 例えば、前述のインターステラテクノロジズは、民間企業主体で開発するものとしてはじめて宇宙空間に到達するロケットの打ち上げを、今年中に予定している。これは、超小型衛星向けのロケット打ち上げビジネスにつながる一歩となる。

 アクセルスペースは、小型リモセン衛星50機で地球観測サービスを行うコンステレーション計画”AxelGlobe”の、最初の3機の衛星を今年打ち上げ予定である。世界的な小型衛星の大量打ち上げに伴うスペースデブリ(宇宙ごみ)問題に対しデブリ処理事業を進めるアストロスケールは、微小デブリ観測を目的とした自社衛星を、今年中を目処にはじめて打上げる。

 ispace(HAKUTO)は、Google Lunar XPRIZEの最終年を迎え、自らのローバー(月面探査機)の月への打ち上げ・走行を成功させてレース優勝を狙う。報道レベルで言えば、他にも各社のさまざまな計画が、まさにラッシュのごとく挙げられている。

 そして、日本の宇宙ビジネスをサポートすべく、筆者も運営に携わる日本初の宇宙ビジネス・カンファレンスSPACETIDEが、初回の2015年に続きSPACTIDE 2017として2月に開催される。

 今後の本連載では、これらの宇宙ビジネスの現在地とこれからについて、より詳細に取り上げていく。

佐藤将史 株式会社野村総合研究所 上級コンサルタント
宇宙業界やベンチャー振興を軸に、科学技術・イノベーション関連の政府・企業をクライアントとしたコンサルティング事業に従事。政策立案からビジネス戦略まで幅広く行う。東京大学理学部卒(2001年)・同大学院理学系研究科修了(2003年、惑星科学)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)MPP(公共政策修士・2013年)。総務省「宇宙xICTに関する懇談会」構成員。社団法人SPACETIDE理事。現在、2月28日に開催される、日本初の宇宙ビジネス・カンファレンスSPACTIDE 2017の運営に注力している。

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