本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、国立情報学研究所の喜連川優 所長と、NECの清水隆明 取締役 執行役員常務兼CMOの発言を紹介する。
「社会価値を第一に考えたプロジェクトを推進していきたい」 (国立情報学研究所 喜連川優 所長)
国立情報学研究所の喜連川優 所長
国立情報学研究所(NII)が先ごろ、2016年2月に発足した産学連携プロジェクトの「コグニティブ・イノベーションセンター(CIC)」における2016年の活動報告を行うシンポジウムを都内で開催した。喜連川氏の冒頭の発言はそのスピーチで、CICの基本方針について語ったものである。
CICは日本IBMと研究契約を結んで同社の支援を得るとともに、幅広い業界の日本企業が参画し、AI(人工知能)技術を活用した「コグニティブ(認知)テクノロジ」の社会応用促進に向けた意識変革と、最先端技術と産業の新たな結びつきの発見という2つのイノベーションを起こすことを目的としている。
研究内容としては、AI技術にとどまらず、多様なITの要素を幅広く活用し、とりわけビッグデータから学習して自然なインタラクションの中で人間の認知や判断を支援する面に主眼を置いており、NIIとIBMの知見、およびIBMから提供されるコグニティブシステム「IBM Watson」やクラウド基盤「IBM Bluemix」を活用し、さらには参画企業各社の知見も融合しながら、新たな価値創出に挑んでいる。
参画企業には、みずほフィナンシャルグループ、三菱東京UFL銀行、三井住友銀行、第一生命保険、日本航空、パナソニック、日産自動車、小松製作所、オリンパス、キリンビール、帝人、キッコーマン、三越伊勢丹ホールディングスなど23社が名を連ねている。
シンポジウムでは、CICの石塚満センター長がこれまで毎月開かれた研究会の内容(図1)やテーマの絞り込みについて報告。活動を通じて同氏の視点で「学んだこと」(図2)についても説明した。また、日本IBMがWatsonの最新動向を紹介。テーマごとの研究グループリーダーによるパネルディスカッションも行われた。
(図1)2016年のCIC研究会の内容
(図2)CICの石塚満センター長が活動を通じて「学んだこと」
最後にスピーチした喜連川氏は、「当初はこうした産学連携プロジェクトが本当にうまく行くかどうか心配していたが、日本IBMのご支援と参画企業のお力添えをいただき、これまで非常に“元気な”おつき合いができていると実感している」とプロジェクトの手応えを語り、冒頭の発言のようにCICの基本方針について強調した。