今週の明言

国立情報学研究所とIBMによる産学連携プロジェクトの成果と課題 - (page 2)

松岡功

2017-01-13 12:00

 一方で、プロジェクト会員の年齢層が比較的高いことから、「これからは若い人たちをもっと巻き込んでいこう」との課題も。そのうえで「これからはもっと“やんちゃ”に活動していこう」とエールを送った。

 CICは産学連携プロジェクトによるオープンイノベーションの取り組みとして着実に進んでいるようだ。それをシンポジウムの熱気で感じ取ることができた取材だった。

「不可能とみられる挑戦も勇気ある志の高い冒険家がいずれ成し遂げる」
(NEC 清水隆明 取締役 執行役員常務兼CMO)


NECの清水隆明 取締役 執行役員常務兼CMO

 NECが先ごろ、同社独自のAI技術を活用して医薬品開発で重要な新薬候補物質を発見するとともに、実用化を支援する創薬事業を開始すると発表した。清水氏の冒頭の発言は、その発表会見で開口一番、この取り組みのキーとなる研究者を評して述べたものである。

 NECは創薬事業の開始にあたり、同社が発見した「がん治療用ペプチドワクチン」の開発・実用化を推進する新会社「サイトリミック」を設立。また、NECとサイトリミックはファストトラックイニシアティブ、SMBCベンチャーキャピタル、NECキャピタルソリューションと、各社を引受先とするサイトリミックの第三者割当増資に合意した。

 同社はAI技術群「NEC the WISE」の1つとして、機械学習と実験を組み合わせることにより、短期間かつ低コストで、ワクチン候補となるペプチド(各種アミノ酸十数個結合した分子)を高効率に発見できる独自の「免疫機能予測技術」を有している。そしてこの技術を活用し、2014年からの山口大学・高知大学との共同研究および山口大学における臨床研究を通じて、肝細胞がんや食道がんなどの治療に効果が期待でき、かつ日本人の約85%に適合するペプチドを発見した。

 サイトリミックは今後、NECが発見したペプチドを主な有効成分とするワクチンについて、治療用製剤の開発、非臨床・臨床試験、製薬会社との事業化検討などを行い、新たながん治療薬としての実用化を進めるとしている。

 今回の取り組みにおける詳しい内容については関連記事をご覧いただくとして、筆者が非常に印象深かったのは、清水氏の冒頭の発言だった。厳密には「私はそう信じている」と続けたが、開口一番にこう言いたいという強い想いが伝わってきた。

 清水氏が「冒険家」として紹介したのは、山口大学の岡正朗学長とサイトリミックの土肥俊社長。冒険家であり「不屈のチャレンジャー」とも清水氏から紹介された両氏は、今回の取り組みについてそれぞれの立場から説明を行った。

 今回の発表によって創薬事業に参入したNEC。同社の社会ソリューション事業への注力ぶりを示す取り組みである。

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