欧州連合(EU)の欧州議会法務委員会は、倫理や安全性、セキュリティをめぐる問題を解決するために、EUとしてロボットの使用に関するルールを定める必要があると述べた。それによりロボットは、「電子的人物」としての法的地位を得るかもしれない。
欧州議会の議員らは、ロボット工学や人工知能(AI)の経済的潜在力を引き出し、同時に安全性やセキュリティを保証するため、EU全域にわたるルールが必要だと述べている。EUはこれに率先して取り組む必要があり、そうしなければロボットに関するルールを他者に決められてしまうおそれがあると、同委員会は報告書で警告した。
議員らは、ロボット工学が社会、環境、人間の健康に及ぼす影響について責任の所在を明らかにし、法律、安全基準、倫理基準に従って運用するために、ロボット工学や倫理規定を所管する新たな欧州機関の設置を求めている。
こうした規定では、緊急時にロボットの電源を切れるよう、設計者がロボットに「キル」スイッチを取り付けることを推奨するべきだと議員らは述べている。
法務委員会は、とりわけ緊急に必要なのは自動運転車に関するルールだとして、強制的保険制度や基金を作り、自動運転車が事故を起こした場合には被害者が十分な補償を受けられるようにするべきだと述べた。
長期的には、損害があった場合の責任を明確にするため、特に洗練された自律型ロボットに「電子的人物」という特別な法的地位を与える可能性も検討するべきだと議員らは述べている。
欧州は、ロボット工学のさらなる活用が社会に及ぼす影響にも目を向ける必要がある。そうした影響には、新たな雇用モデルや、ロボット工学に対する現行の税制および社会制度の有効性といったものがある。
ロボットはますます日々の生活に溶け込んでいるが(世界にはすでに約170万体のロボットが存在する)、その利用はまだ適切に規制されていないと報告書は指摘している。
報告書を作成したMady Delvaux氏は、欧州が自己学習型ロボットの台頭に備えるべきだと述べている。選択肢の1つは、ロボットに「法人格(corporate personality)」のような限定された「電子的人格(e-personality)」を与えることだ。法人格という法的地位によって企業は原告にも被告にもなりうる。
Delvaux氏は次のように述べている。「われわれに今必要なのは、現在市販されているロボットや今後10~15年で提供されるロボットの法的枠組みを作ることだ」
「われわれは常に、ロボットは人間ではなく、今後も決して人間にはならないことを人々が忘れないようにしなければならない。ロボットは共感を示すように見えることもあるかもしれないが、感情を持つことはできない。われわれは、人間らしさを持った日本のロボットのようなものが欲しいわけではない。われわれが提案した憲章では、人が感情面で依存するようなロボットであってはならないと規定している。人は肉体労働でロボットを頼ることはできるが、ロボットが人を愛したり、人の悲しみを感じたりすると考えてはいけない」(Delvaux氏)
なお、国際連合は、戦場でAIを「キラーロボット」という形で利用可能にすべきかどうか議論している。また、ロボットに関する一連の法則もすでに考案されている。SF作家Isaac Asimov氏が示したロボット3原則だ。
ロボットは「電子的人物」という特別な法的地位を与えられるべきか?
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この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。