本連載の前回「IT部門の高齢化問題への対処」では、人事ローテーションの重要性について述べたが、今回は、IT部門内でいかにベテランIT人材に活躍の場を与えるかについて考えてみます。
活躍の場をいかに作るか
社内IT部門の枠を超えた、他部門やグループ企業との間の人事ローテーションは、IT部門の高齢化問題への対処の1つとなりうるものの、これは経営者や人事部門の理解や協力が必要であり、困難の伴う企業も少なくないでしょう。
そこで、IT部門内でこの問題を解消しようとすると、IT部門の業務領域を拡大するか、あるいは高度な能力を必要とする業務領域の業務量を増やす以外に方法はありません。つまり、IT部門が従来と同じ業務分掌で同じ業務領域を範囲としていたのでは、ベテランを活かす仕事を与えることはできないことを意味します。
その取り組みのひとつに社内コンサルタントの育成があります。ある製薬会社では、「IT組織全体がコンサルティング会社へ、ITスタッフ個人がビジネス・コンサルタントへ」を合い言葉に、IT組織のあるべき姿を追求しています。
また、ある製造業では、情報システム部門内にITコンサルティング・チームを設置し、ベテラン人材を配置することで、社内の業務改革プロジェクトを推進する役割を担わせる取組みを行っています。
その他、組織として設置しているわけではありませんが、PMO(Program/Project Management Office)、VMO(Vendor Management Office)、R&D(新規技術調査・検証)、IT法務、システム監査など、本来重要でやるべきではあるが、難易度が高くなかなか手が回っていない領域を拡張するという例も見られます。
グループITガバナンスの強化や技術標準化といったプロジェクトを立ち上げ、その推進を任せるということも考えられます。そのような分野にベテラン人材を配置することで、それぞれの分野で専門性を身につけるように仕向けつつ、ITマネジメントの高度化を図ることができるはずです。