日本株展望

トランプ不安・EU不安から株安、日銀買いの効果は?

ZDNet Japan Staff 2017年01月18日 11時00分

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今日のポイント

  1. 1月に入り、トランプ不安、EU不安が再燃。「リスクオフの円高」が進み、日経平均が売られた。世界景気は回復傾向にあるが、世界の政治不安は一段と高まっている
  2. 日経平均が下落する局面では日銀のETF買いが増える。ただし、日銀のETF買いだけで下値を支えることは困難。円高と外国人売りが止まるまで、調整が続く可能性も

 これら2点について楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

トランプ不安にEU不安が加わり、「リスクオフの円高」進む

 1月11日の記者会見を皮切りにトランプ次期大統領の「暴言」が復活している。大統領選直後の「勝利宣言」に見られた国際協調、米国民の団結を呼びかける姿勢は影を潜め、世界をあきれさせる保護貿易、対外強硬策、マスメディア敵視の暴言を連発している。いずれ「円安批判」発言も出るとの連想もあり、円高が進んだ。

 トランプ氏と金融市場の蜜月は暴言復活時、あるいは1月20日(大統領就任時)に終了する可能性があると考えられていたが、そうなりつつある。

 17日はそれに欧州連合(EU)不安が加わった。昨年6月、英国は国民投票でEUからの離脱(ブレグジット)を可決した。メイ英首相は、EU離脱の基本方針を示す演説でEU単一市場から完全に離脱する用意があると表明した。

 英国はEUから離脱後も政治的、経済的なつながりを広範囲に残す「ソフトランディング」を選択せざるを得ないと見られていたが、その見方を覆す発言となった。英国とEUの経済関係が一気に崩れる「ハードランディング」のリスクが再び意識され、英ポンドが急落した。そうした不安も、円高につながった。

 EU不安に輪をかけるように、トランプ氏が英国のEU離脱を賞賛し、英国との関係強化に動くコメントを出している。トランプ氏はさらに、EUを支配するドイツを批判し、EU各国がEUに居続けることはできないと、EUの切り崩しを狙うようなコメントも出している。

世界景気は回復歩調

 2017年は世界景気が改善に向かう中、世界の政治不安が高まる年と見られていた。年初から早くもトランプ不安とEU不安が顕在化しつつある。また、今のところまだ先鋭化していないが、中国の海洋進出に伴う米中緊迫化のリスクもある。

 年前半は、日本と世界の景気・企業業績の改善が続くと考えられるので、政治ショックで下げたところは買い場になるだろう。ただし、下げてすぐに買うのではなく、悪材料がいったん出尽くす、あるいは、織り込まれたと考えられるところまで日経平均が下がってから、少しずつ慎重に買っていくべきだ。

 目先はまず、1月20日のトランプ氏の大統領就任演説の内容を確認したい。大統領選「勝利宣言」に匹敵するような優等生発言がもう一度できるか、あるいは、もう二度と美辞麗句は使わないのか、見極めたい。

日銀のETF買いは日経平均の下値を支えられるか?

 日本株上場投資信託(ETF)の買い主体として日銀の存在がどんどん大きくなっている。日本銀行は、これまで累計で約11兆円の日本株ETFを買い付けた。2016年から買い付けペースが上がっている。

 2015年12月の金融政策決定会合で年3兆円のETF買い取りを3.3兆円に増やすことを決め、さらに2016年7月に年6兆円の買い取りとすることを決めた。

日本銀行による日本株ETFの累積買い付け額推移:2011年1月~2016年12月

日本銀行による日本株ETFの累積買い付け額推移:2011年1月~2016年12月
(出所:ブルームバーグ)

 ここから年6兆円のペースでETFの買い取りを続けると、保有残高は1年後に17兆円、2年後に23兆円、3年後に29兆円に達し、巨大な日本株の買い手となる。それだけに「どのような買い方をするのか」に注目が集まっている。

日本銀行はこれまで、おおむね決められたペースでETFを買い付けている

 日本銀行のETFの買い方に明確なルールはない。これまでの買い方を見ると、日経平均が下がった時に買いを増やし、上がると減らす傾向が鮮明だ。

日銀のETF買取額と日経平均の月次騰落率:2015年1月~2017年1月(17日まで)

日銀のETF買取額と日経平均の月次騰落率:2015年1月~2017年1月(17日まで)
(出所:日本銀行のデータより、楽天証券経済研究所が作成)

 年3兆円(月平均2500億円)のペースで買うとしていた2015年中は、月平均2558億円とほぼ予定通りに買い付けている。2016年1~7月は年3.3兆円(月平均2750億円)に近いペースで買い、2016年8~12月はほぼ年6兆円(月平均5000億円)に近いペースで買い付けている。

 日経平均が下がった月の買い付けが増えて、上がった月の買い付けが減る傾向が顕著だが、ならすと、金融政策で表明している買い付けペースを守っている。

 今月は日経平均が下がったので、買い付けが増えると予想される。日経平均が下がった16、17日は、続けて703億円の大口買いを出している。

 日銀の買いには日経平均の下支え効果があるが、それでも外国人の売りが増加する時は、日経平均の下げを止めることはできない。円高と外国人の売りが止まるまで、下値リスクは続く。

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