経済産業省とNEDO、福島県、南相馬市、自律制御システム研究所は1月12日、福島県南相馬市の海岸において、世界初という完全自律制御による回転翼ドローンでの長距離荷物配送の飛行実証試験を同日実施し、成功したと発表した。実証試験では、サーフィンのメッカである福島県南相馬市の北泉海水浴場に設定された配送先まで、約12kmの区間をドローンが温かい飲物を運び、現地のサーファーに届けた。この成果は、平時の荷物配送のみならず、災害時の緊急物資輸送にも活用されることが期待されるとしている。
当日の機体
飛行の様子
サーファーに暖かい飲み物を手渡す様子
今回の飛行実証試験は、ドローンを活用した物流システムの性能評価手法の開発のためのNEDOプロジェクトの一環として、自律制御システム研究所が主体となって行われたもの。また飛行実証試験の場所としては、福島県や南相馬市がロボットやドローンの実証場所を提供する「福島浜通りロボット実証区域」制度を活用し、福島県南相馬市の海岸が利用された。
福島県では、物流、インフラ点検、災害対応などの分野で活用するロボット・ドローンが実際の使用環境で円滑に実証できるよう、浜通り地域の橋梁、トンネル、ダム・河川、山野などの実証場所の選定、斡旋、調整を行っており、昨年度の事業開始から現在まで16件(のべ47日間)の実証を実現させている。今回は、NEDO及び自律制御システム研究所の相談に応じて、福島県南相馬市の海岸線において、ドローンの長距離飛行試験の実施に向けた調整を行った。
実証試験に利用されたドローン「ACSL−PF1」は、ドローンを活用した楽天の配送サービス「そら楽」の専用機「天空」のベースにもなっている機種。今回は、福島県南相馬市の海岸線約12kmの区間(南相馬市小高区村上城跡〜同市原町区北泉海水浴場)を飛行し、完全自律制御による長距離荷物配送を行った。
飛行コース
NEDOプロジェクトは、ドローンなどに関して、用途に応じた性能・安全性の評価手法(評価軸、評価軸に沿った性能レベル、標準的な性能測定試験方法)を設定することを目標としている。今回の飛行試験の成果は、物流に用いるドローンの積載性能に関する性能評価手法などの研究開発に活用されるという。
また、今回の飛行実証試験に代表される福島浜通りロボット実証区域での取り組みを、福島県の復興に向けた新産業創出の施策である「イノベーション・コースト構想」の実現に向けた第一歩とし、南相馬市及び浪江町に整備する(2018年度順次開所予定の)ロボット・ドローンの実証拠点「ロボットテストフィールド」とも連携して、福島県にロボット産業集積を図っていくとのこと。