日本株展望

トランプ大統領の就任演説はノーイベント--膠着続きそう

ZDNet Japan Staff 2017年01月23日 10時35分

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今日のポイント

  1. トランプ大統領就任演説は、内容にサプライズ(驚き)なく、ノーイベント(為替や株を大きく動かす材料ではないこと)。米国第一・保護貿易主義を前面に押し出したことはネガティブだが、想定範囲内。公共投資増額の言及あったが、具体策はなかった
  2. 今週の日経平均は引き続き膠着色の強い展開と予想。トランプ不安と景気・企業業績回復期待の綱引き

 これら2点について楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

トランプ新大統領の就任演説にサプライズはなかった

 就任演説で何が飛び出すかわからないと警戒されたものの、内容は事前想定の範囲内だった。

 「アメリカ・ファースト(米国第一)」「バイ・アメリカン(アメリカ産品を買え)、ハイヤー・アメリカン(アメリカ人を雇え)」など、保護主義を前面に押し出す内容だった。事前の想定内とはいえ、保護主義を強烈に押し出す内容であったことはネガティブだ。

 「Protection will lead to great prosperity and strength(保護主義が大いなる繁栄と力を生む)」「Job(仕事)を取り戻す、国境を取り戻す、富を取り戻す」など、反グローバル・反資本主義の主張に満ちあふれていた。

 「新しい道路、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道を建設する」と、財政出動に取り組むことに言及したが、具体的な内容(金額や時期)は示されていない。具体的な内容は、2月上旬に示される予算教書を待たなければならない。

 トランプ支持層である低所得者層に向けて、「エスタブリッシュメント(既得権益者)・ワシントン(米政府)から権力を取り戻し、国民主導にする」と、貧富の差拡大を放置してきた既存政治の批判にも力を込めていた。

 トランプ氏の発言が差別を助長し米国民の対立と分断を深めたとの批判があることに対し、「愛国心の元に米国民が団結すれば、そこには偏見が入り込む余地はない」「肌の色が黒でも、褐色でも、白でも、同じ赤い血が流れている」と、「米国第一」のもとでの団結を呼びかけた。

 一方で、「過激なイスラムのテロを地球上から完全に根絶する」と、敵対勢力とは徹底的に戦う構えを示した。「米国軍は、自国でなく他国を防衛するために、巨額の費用をかけてきた」と、防衛費の負担を同盟国に求める自説も繰り返した。

TPP離脱、NAFTA見直し、オバマケア廃止を表明

 就任演説後に示した施政方針では、TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱と、NAFTA(北米自由貿易協定)の見直し、オバマケア(医療保険制度改革)の廃止を発表した。

 TPPから米国が離脱すると、TPPの経済的価値が大きく低下する。TPPは自動車など輸出産業に競争力のある日本に有利と考えられていたことから、日本にとってマイナス材料だが、現時点で日本はまだTPPに加盟していないので、現行の貿易の仕組みが変わるわけではない。

 影響が大きくなる可能性があるのが、NAFTA(北米自由貿易協定)の見直しだ。もし、米国とメキシコの間に国境税がかけられるようになると、米国企業だけでなく、日本企業にもダメージが及ぶ。日本企業に、メキシコに工場を作ってそこから米国に輸出するビジネスを手がけるところが多いからだ。

日経平均は膠着感強まる、トランプ不安と景気回復期待の綱引き続く

 トランプ大統領の就任演説がノーイベントだったため、今週の日経平均は、引き続き、上下とも大きくは動きにくいと予想される。トランプ政権が打ち出す政策への不安が上値を抑える中、世界および日本の景気が回復してくる期待が下値を支える。

 トランプ大統領は、保護貿易主義を前面に押し出しており、それは、いずれ円安批判につながる懸念がある。先週、トランプ氏は、「ドル高は行き過ぎ、中国は為替操作国(人民元安誘導)」と批判したが、円安は批判していない。いずれ、円安批判が復活する懸念は強いと考えられる。

 ちなみに、「中国は人民元安を誘導している」というトランプ大統領の認識は、事実と異なる。かつて、中国が人民元安を誘導していたことがあるのは事実だが、現在は異なる。現在は、中国からの資本流出が続き、人民元に売り圧力がかかっている。中国政府は、人民元が下がるのを防ぐために、人民元の買い介入をしているところだ。手持ちのドルを売って人民元を買う介入を行っているために、最近は中国の外貨準備の減少がきわだっている。

日米の10~12月決算発表に注目

 トランプ不安が続く中、日米ともに景気・企業業績の回復に期待が集まっている。米国は、今週、10~12月決算の発表ピークとなる。日本は、今週から、10~12月決算の発表が始まる。

 円安と、米国および中国の景気回復を受けて、10~12月の決算は好調と推測される。例えば、半導体や工作機械などの設備投資が徐々に盛り上がってきており、景気敏感株の決算が注目される。

 トランプ不安を打ち消して日経平均が上昇するほど、企業業績の回復モメンタムが強いか否か、これから発表される10~12月決算の注目度がきわめて高くなっている。

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