「IoTを活用した新しいビジネスでは、早期に取り組んだ会社が競争に勝つ。だから、2カ月ほどの短期間でIoTシステムを立ち上げられる導入プログラムをパッケージ化した」(SAPのP&I LoB Digital Assets & IoTでExecutive Vice Presidentを務めるDr. Tanja Rueckert氏)
SAPのP&I LoB Digiytal Assets & IoTでExecutive Vice Presidentを務めるDr. Tanja Rueckert氏
SAPは1月10日、IoTシステムを構築するためのソフトウェア製品群「SAP Leonardo」を発表した。IoTの基盤ソフトやIoTの標準アプリケーションを提供するとともに、アーリーアダプタ向けにIoTアプリケーションの評価環境を短期導入できるプログラム「jump-start」(ジャンプスタート)を用意した。
SAPは2016年に、2020年までに20億ユーロをIoTに投資することをアナウンス済み。SAP Leonardoは、このIoTへの投資の一環となる。SAP Leonardoを使うことによって「モノやヒトなどのIoTデバイスをビジネスプロセスにつなぐことができるようになる」(Tanja Rueckert氏)
20億ユーロの投資によって、SAP Leonardoを強化するためのいくつかの買収も実施した。例えば、IoTプラットフォームを持つイタリアのPLAT.ONE、IoTデータ分析ソフトを持つノルウェーのFedem Technology、IoTデータを格納するHadoopサービスを持つ米Altiscaleなどを買収している。
SAP Leonardoは、SAP HANAなどの既存のSAP製品の上に、IoTに特化したデータ配信やデバイス管理などのプラットフォーム基盤機能を提供する「LeonardoFoundation」を提供する。さらに、個々の業務用途ごとにIoTアプリケーションを標準パッケージとして提供する。
工場設備の予防保全など用途ごとにアプリケーションを提供
最も典型的なユースケースとしてTanja Rueckert氏は、産業機器をインターネットに接続する用途を挙げる。工場において、機械のアセット管理や自律型の製造、部品のトレーサビリティなどを実現する。製品出荷後の流通や輸送にもIoTが活用できるという。
産業機器の管理にIoTを活用することの分かりやすいメリットは、稼働状況を監視した上での予防保全などによって、計画外の保守作業が不要になることだ。「機械などの利用環境をサービス型で提供する“プロダクト・アズ・ア・サービス”も可能になる」(Tanja Rueckert氏)
産業用途以外にも、市街地でIoTを活用するスマートシティや、農業におけるIoTの活用、ウェアラブルデバイスを用いた作業者の健康状態の把握、といった領域もカバーする。「IoTを活用するアプリケーションを拡充していく」としている。
2016年9月にはNTTと共同で、バスの安全な運行にIoTを活用するアプリケーションの例を発表済み。自動車の挙動データを分析するSAP製ソフト「CTS(Connected Transportation Safety)」と、NTTが東レと共同開発した素材で、着用するだけで運転手の心拍数などを取得できる「hitoe(ヒトエ)」を組み合わせたものだ。