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映画を変革するCG技術(後編)--「スター・ウォーズ」への喝采と落胆 - (page 2)

稲田豊史

2017-01-29 07:00

 ここで、少し別の話をしよう。2015年12月に公開された「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」についてだ。「スター・ウォーズ」は第1作から第3作が1977年から1983年に公開され、第4作から第6作が1999年から2005年にかけて公開された。「フォースの覚醒」は第6作から10年ぶりに製作・公開された、第7作目にあたる。

 そもそも、「スター・ウォーズ」の歴史は映画におけるVFXの歴史そのものといっても過言ではない。その時々のハリウッドの最新技術が、考えられうる最大の費用を投じて採用されているからだ。つまり40年の歴史がある「スター・ウォーズ」は、近作になればなるほどVFXが進化しているということになる。

 ところがだ。古参の「スター・ウォーズ」ファンであればあるほど、古い第1作から第3作を好み、新しい第4作から第6作を嫌う傾向にある。理由は、第4作から第6作が“CGすぎる”からだ。画面内に登場する大半の事物がCGで描かれた結果、「薄っぺらい」「嘘くさい」という印象を観客に与えてしまったのである。いずれも古参ファンの主観的な印象にすぎないが、多くの反発があったのは事実である。

 しかし皮肉な話だ。第1作から第3作では、VFX技術が発展途上だったため、スタッフは苦肉の策で工夫を凝らし、壮大な宇宙世界を作り上げていった。ミニチュアを使って宇宙船を作り、着ぐるみを駆使して異星人を創造した。当然、リアリズムからは程遠いものも含まれていた。稚拙な出来のものもあった。しかし、ファンには愛された。

 ところが、1990年代以降に急速進化したCGをフル活用した第4作から第6作は、VFXレベルは明らかに上がっているのに、「薄っぺらい」「嘘くさい」と言われる始末。第4作から第6作を監督し、ドヤ顔で最新CGを大量に盛り込んだスター・ウォーズの生みの親、ジョージ・ルーカスは、この反発に何を思っただろうか。ルーカスが第7作目以降の作品制作に一切ノータッチを宣言したのは、無理もなかろう。

 そんな状況下で製作された「フォースの覚醒」は、その驚くべき制作方針を早々と発表する。曰く、「異星人などは極力CGを使わずに着ぐるみや実物の人形を使用して撮影し、背景はCG一辺倒ではなく、できるだけロケを行い、セットを組んで撮影する」。このメイキングを見れば、言わんとするところがわかるだろう。

 たしかに、モニタ上のCGではなく、手触りのある実在物を撮ることで立ちのぼるリアリズムは無視できない。ただ、ルーカスがメガホンを取った第4作から第6作時点、つまり2000年代半ば以前の技術ならともかく、現在のCG技術やノウハウをもってすれば、すべてをCGで作ったとしても「薄っぺらい」「嘘くさい」と言われることはないのではないか。少なくとも、「スクリーンに投影して鑑賞する二次元映像コンテンツ」のレベルであれば。

 しかし、「フォースの覚醒」の監督J・J・エイブラムス――大の「スター・ウォーズ」ファンにして、日本のポップカルチャー好き――は、なるべくCGを排した実写撮影に、あえてこだわった。まるで昭和の文豪が、「作文用紙に万年筆で刻みつけることで生まれる気迫というものがあるのだ。ワープロでは魂が込められん!」と叫んでいるように、見えなくもない。これは、ノスタルジックな精神論の話なのか?

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