通常、プライベートクラウドを支持する意見では、柔軟性や敏捷性、素早く規模を拡大する能力などの、運用上のメリットを強調する。しかし、財務的な側面については、あまり議論が明確にならないことが多い。Nokiaはこの状況を変えるため、レガシーITのプライベートクラウドへの移行は経費削減にもつながることを示す新たな分析を公表した。この分析は、IDCの検証を受けている。
分析によれば、多くの大企業は、移行によって今後5年間のIT経費を最低でも25%削減できるという。また、投資は3年以内に回収できると結論づけている。
このIDCが検証した「Nokia Enterprise Private Cloud TCO Model」と名付けられた分析は、この種のものとしては初めての試みだ。
Nokiaのエンタープライズクラウドおよび金融部門マーケティング責任者であるMichael William氏は、米ZDNetの取材に対して、「一般的に、プライベートクラウドは経費が掛かりすぎるとみられている。当社は、Nokiaだけでなく業界全体のためにその思い込みに反論し、『プライベートクラウドは財務的に意味がある』ことを示そうとしている」と語った。
Nokiaは2017年6月まで、大企業に対して、無料で各企業の状況に合わせた分析を提供することにしているという。
Williams氏は、この種の財務的分析がこれまで行われたことがなかったのは、あまりにも多くの変数があるためだと述べている。「過去のやり方では、分析は麻痺してしまっていただろう。すべてのコストを見積もろうとして、プロジェクトの評価に6カ月もかけるわけにはいかない」と同氏は言う。
このモデルを開発するために、Nokiaはいくつかの変数を分析から除外した。この分析は、さまざまなベンダーから提供されている既存のコンポーネントを用いて構築された、OpenStackベースのプライベートクラウドにのみ適用されるものだ。また、IT環境を「フォークリフト」式に置き換えるのではなく、クラウドアーキテクチャは既存インフラの上にオーバーレイとして構築されると仮定している。この種の導入戦略を用いることで、定常的な運用に及ぼす変更を最小限にとどめることができる。
「すでにフリーアクセスフロアや何らかのデータセンターを持っているのであれば、それを変える必要はない」とWilliams氏は説明する。「SDNのオーバーレイを利用すれば、いくつかのサーバを投入し、いくつかを廃止するだけで済む。電源も変わらず、空調設備も同じで構わないため、これらのコストは考慮する必要すらない。これで分析は非常に単純になる」(Williams氏)