今日のポイント
- トランプ大統領が、保護主義・自国中心主義の大統領令を乱発していることが、世界経済および株式市場にとって重大なリスクになっている。トランプ大統領の経済政策は、短期的に米景気を強くするものの、長期的には米経済を弱体化させると考えられる
- トランプリスクは大きいが、2017年前半は世界経済の回復の勢いが強く、世界的な株高が続くと予想されている。年後半に、世界的な株安になるリスクがあると見られている
これら2点について楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。
「入国制限」で全米を混乱に陥れたトランプ大統領
大統領選中に反グローバル・反資本主義の暴言を乱発して、世界を驚かせたドナルド・トランプ氏が、大統領就任後に過激発言をエスカレートさせている。大統領に当選した直後から、世界的に株が上昇して「トランプ・ラリー」と呼ばれるようになったことから自信を深めたのだろうか、大統領令を乱発して、暴言を実行に移そうとして世界中に波紋を広げている。

トランプ大統領は、メキシコを含むNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しを指示したことに加え、メキシコ国境に壁を築く大統領令にもサインした。隣国同士は、どこでもさまざまな対立を抱えているものだが、深い経済関係で結びついたメキシコに対して、これほど一方的に敵意を示すのは常軌を逸している。
27日に出した「テロ懸念国から米国への入国を制限する」大統領令も、全米に混乱を引き起こした。この大統領令は、イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンおよびシリアから来た人々の米国への入国を制限する内容だ。この7カ国をテロ懸念国と指定し、入国審査の厳格化によってテロリストを完全に排除できるようになるまで米国に入国させないとした。シリア以外の6カ国については6カ月間、シリアからの来訪者は無制限に入国禁止とした。
突然の大統領令を受けて、米国の空港で拘束されたり、米国行きの飛行機への搭乗を拒否されたりした人が、280人以上に上った。これに対し、全米各地の空港で抗議デモが広がっている。正式なビザを持っている者まで突然拘束するやり方に対し、各地の司法長官から「大統領令は憲法違反」との意見も出ている。