確認は安心を得ることにつながり、安心できるということはすなわち「よいUX」の一部である。逆に、確認できない、という状況は不安を引き起こし得る。
特定の場所への行き方を示すことに特化した略地図のようなものは、まさにその「確認する」ための情報がうまく抽出・選別され記載されているものがよい。略地図を作るのが上手い人、また、文章や電話越しの音声などでの「行き方」の説明が上手い人というのは、この抽出・選別に長けている(適切な情報デザインができている)と思われる。「UIデザイン」「UXデザイン」に求められる能力の一つであるといってよいであろう。
地図と現実の事物との対応
2014年1月にサービスを停止したARナビ「セカイカメラ」
「確認する」ときに何を確認できるべきか、というとまず大事なのは、地図や文字・音声により示されたものと目の前の現実の事物との対応関係である。ナビゲーションするための情報は、この対応関係に混乱をきたさないように注意して用意せねばならない。
たとえば「信号のところを右に曲がる」と言われたときの「信号」は、今、目の前にあるこの信号なのか否か迷ったことはないだろうか。「そこから3つめの信号」の「3つ」にはひょっとしてこれを含むのだろうか?大雑把に描かれた略地図の同じ太さの分かれ道が、現実では大きな道とかなり細い道で困惑した経験はないだろうか。
拡張現実(AR)技術を使って実際の事物(それ自体か、そのリアルタイム映像)に情報を重ねられれば、対応関係は直接的になり、その点は大きく改善される。一方で、精度やユーザーの動作に対する追随速度が充分でないとずれてしまったり、また「ずれていないか」という不安を引き起こしてしまうので、さまざま場面で使える完璧な解決策となるまではまだしばらく時間が掛かるであろう。
地図や、ユーザーの手元で見られる情報に頼らずに(あるいはそれに加えて)、実際の事物に物理的に「矢印」などの案内表示を付加しておけば「対応のずれ」の問題は「適切な情報デザインがされた案内表示であれば」なくなる(参考:新宿高層ビルの館内施設案内板の例)。しかし、大きな施設などで示すべき目的地となりうる場所の数が増えると、前々回に述べた 「多くの項目を含むリストから目的のものを探す」のと同じ困難さが生じる。自分が必要とする案内表示だけがあればよいが、さまざまな人々の行き交う公共の場所ではなかなかそういうわけにはいかない。