次善の策として、目的地に対応する案内がどれか、ということを、人間の認知機能の特性を利用してわかりやすくする、ということが考えられる。色分けや大きなアイコン、アルファベットの記号でシンプルに識別できるようにする、などは心がけるべき基本的なポイントである。
たとえば羽田空港の国内線ターミナルの出発ロビーには手荷物検査場がいくつかあり、それぞれ一文字のアルファベットが割り当てられている。乗客は各自の利用するゲートに近いところ(搭乗券などで知らされる)を通るが、検査場のアルファベットはロビーの遠めのところからでも見えるような位置に、大きく書かれており、すぐに目につく。これはわかりやすいデザインと言えるであろう。
見失わせない工夫
上述の例は見通しのよい場所だったので、広い範囲から目的地が直接見えることを想定できたが、一般的には、直接は見えずいくつかの案内情報をたどって目的地を目指す。そうすると今度は、「途中で案内情報を見失う」という問題が発生しうる。
案内情報の矢印が指し示す先が一本道で、目的地もしくは次の案内情報までの距離があまり長くなければよいが、いくつか途中に分岐があったり、特に情報もないままにあまりにも道のりが長かったりすると、ユーザーは「途中で情報を見落として(あるいは見間違えて)、間違った道に来ているのではないか」と不安に陥りやすい。「見落としていない」ことを確信するのは「見つける」ことよりも格段に難しいことを忘れてはいけない。
大きな病院などで見られる事例で、総合受付から各診療科まで、廊下の床に色分けされた線が続いており、患者はその線をたどればよいようになっている、というものがある。動物園の事例で、全てではないが何種類かの動物のいる場所まで、それぞれの動物の足跡のペイントが続いているというものもある。こうした手法は、使える場面はある程度限られるが、案内を見失わせない、という点で優れたナビゲーションである。動物園の例の場合は、その案内情報自体がある種のコンテンツにもなっていると言え、興味深い。