日本もQZSS(準天頂衛星システム)と呼ばれる日本独自の測位システムの構築を進めている。現在は1機のみの運用となっているものの2017年内に追加で3機が、そして2023年までに7機体制で運用されることが計画されている。
これら各国の測位衛星は商用目的で打ち上げられている人工衛星ではないものの、GPSを始め一部商用利用が可能であり、これら測位衛星を利用したビジネスの発展にも注目が集まっている。測位衛星によるシステムを全球測位システム(GNSS)と呼び、特に近年は各国のGNSSを相互補完的に活用することで、全球的に精度の高い位置情報を取得しビジネスに活用する取組が進んでいる。
例えば自動運転はその代表例であり、日立造船などが取組む自動農機、小松製作所などが手掛ける自動建機・トラクター、各種トラックメーカーによるトラックの無人隊列走行など、精度の高い位置情報を活用した自動運転技術は幅広い産業で注目を集めている。
また室内においてもWi-FiやビーコンなどのICT技術を活用することにより位置情報を取得できることから、今後は屋内外でシームレスな位置情報提供サービスが普及し、さらなるビジネスの広がりが生まれると考えられている。
他産業への波及する地上ビジネスのポテンシャル
今回紹介した、リモセン衛星や通信衛星、測位衛星を中心とする衛星を活用した最新の地上ビジネスは、他産業への波及効果が非常に大きく、さまざまな業界から投資を呼び込み注目を集めている。各衛星の提供する画像データ、通信インフラ、位置情報は、他産業において新たなビジネスを創出するためのインフラやツールとしての活用が期待されている。
これまで宇宙ビジネスと聞くと多くの読者はロケットや人工衛星の製造・打上げ、をイメージする人が大半ではないだろうか。しかし近年注目される新しい宇宙ビジネスは、さまざまなICT技術と密接に結びつき各産業において新ビジネスを創出させる起爆剤となる可能性を秘めている。
前回も紹介した2月28日に開催が予定されている日本初の民間による宇宙ビジネスカンファレンス「SPACTIDE 2017」でも、人工衛星などを利用したビジネスの最前線が紹介される。興味のある読者には参加をお勧めしたい。
次回はこの新しい宇宙ビジネスの動向をさらにくわしく取り上げていく。
2月28日に開催が予定されている日本初の民間による宇宙ビジネスカンファレンス「SPACTIDE 2017」
- 八亀彰吾 株式会社野村総合研究所 副主任コンサルタント
- 宇宙産業を中心とした各種産業政策、産学官連携・産業クラスター政策から民間 企業の事業戦略等の幅広いコンサルティング事業に従事。 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻修了。 大学院ではJAXA宇宙科学研究所にて小惑星や隕石等の太陽系物質科学の研究に従事。