トランプ大統領の入国制限令にLinux界リーダーらの反応は? - (page 3)

Steven J. Vaughan-Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-02-03 07:30

 CanonicalとUbuntuを生み出したMark Shuttleworth氏は、筆者への電子メールの中で、次のように述べている。

 今日は、イノベーションと、あらゆる場所における知識への平等なアクセスの基盤となっているオープンソースの成果について考える良い機会だ。これはまた、真にグローバルな寛容さと人材に依存している。私はここで、今回入国制限の対象となった国々に住む、あるいはそれらの国々を出身とする、グローバルなフリーソフトウェア運動への参加者に感謝したい。彼らの置かれている状況は、彼らが捧げてくれた時間や、洞察、エネルギーに対する特別な関心を呼び起こす。イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンのフリーソフトウェアコミュニティとUbuntuコミュニティ、そしてその背景にあるさらに幅広いオープンソースコミュニティに対して、そのオープンソースとコミュニティの一体感への、活発で多文化的な貢献を賞賛したい。

 最近の分断を助長する大統領令は、米国人に対して、この暗澹たる潮流に抵抗して打破するか、これを暗に支持するかという、不安を掻き立てる、しかし避けることのできない選択を突きつけている。権力に逆らい、理想のために立ち上がるためには勇気が必要だ。私は、アパルトヘイト時代に南アフリカで起こった行動に、その勇気を見た(訳注:Shuttleworth氏は南アフリカ共和国出身)。私は米国の友人や仲間たちに対して、米国建国の基礎となった長く続く開放性の伝統の中に、勇気ある反対を行う強さ、エネルギー、動機を見いだすことを求める。自尊心は、個人的な願望や恐れを超越した価値に対する継続的な献身によってしか生まれない。

 歴史はあらゆる人間の平等を守る立場の味方であり、これは合衆国建国時の文書に力強く記されている価値でもある。大波は寄せては返すが、進歩の流れはわれわれをよりよき世界に向かわせている。この進歩は、あらゆる国々において、あらゆる形態の公民権を守るために、確固たる決意に支えられてはいるが、大衆からの支持が得られないことも多い、しばしば身を挺して戦った人々の犠牲の上に成り立っている。

 今襲ってきている波は衝撃的であり、克服には困難が伴うが、私は時とともに進歩的価値が復活することを確信している。それらの価値は、結局より生産的で幸福な社会を生み出すからだ。

 西側世界を広範に悩ませてきた経済的変化を軽視するのは愚かなことだが、これがTrump氏のやり方やブレグジットに見られる退行的な動きの基盤になっている。グローバル化が万人に恩恵を与えるかどうかはまだ証明されておらず、あらゆる人々が、世界貿易や金融統合へのより効果的なアプローチを見いだすために手を尽くさなくてはならない。

 いずれにせよ、不快を感じるとしても、複雑さと相互依存性は現代社会の本質だ。孤立主義は、現在グローバル化に不満を抱いている人々に、将来さらなる悪影響を及ぼすことになるだろう。現状に不満を持ち、統合を否定してきた人々に対して、私は共感を示したい。旅をするたびに、私は同じことを求める人々を見かける。それは、関心を追求する自由、表現と結社の自由、扱いに対する平等を求める心、そして未来はよくなるという確信だ。

 しかし、これらの万人に共通の願いが、常に満たされるわけではない。いかなる時に、多くの人にとって人生が惨めなものになってもおかしくない。しかし、人間が決めた境界が、これらの課題の一時的な解決になることはない。個人の安全も、そして可能性も、分断主義や孤立主義の態度によっては改善されない。歴史的に言って、この排外主義的な表現や行動は、貧困と不名誉をもたらす。

 Linuxコミュニティとオープンソースコミュニティは、Trump氏の入国に関する大統領令に反対している。願わくは、Shuttleworth氏の意見が正しく、現在大統領が持っている不合理な懸念と移民排斥主義は、より自由で開放的な、希望ある未来に道を譲ると信じたい。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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