高まる基幹システムのクラウド化ニーズにベストタイミングで参入
では、このSAP HANA on Azureパートナー戦略、発表後の市場での手応えはどうか。佐藤氏によると、「すでに合計で90件を超える商談が進んでおり、成約もいくつか出てきた。強い手応えを感じている」とのこと。さらに、「基幹システムのクラウド化に向けて、市場がReady状態になってきていると実感しており、SAP HANA on Azureをベストのタイミングで提供開始することができたと考えている」とも語った。
それを物語るエピソードを、同社の板倉真由美エンタープライズパートナー営業統括本部クラウド&アーキテクチャ技術本部長と、井上和英クラウド&ソリューションビジネス統括本部第一Azure技術部クラウドソリューションアーキテクトが披露してくれた。
日本マイクロソフトの板倉真由美エンタープライズパートナー営業統括本部クラウド&アーキテクチャ技術本部長(右)と、井上和英クラウド&ソリューションビジネス統括本部第一Azure技術部クラウドソリューションアーキテクト
板倉氏によると、「この2月下旬に予定しているSAP HANA on Azureのパートナー各社によるセミナーへの応募が殺到し、すぐに満席になった」という。さらに「どのパートナー企業が自社に合うかを見極めたいので、全社のセミナーを聴講したいとの要望も少なくない」と語った。
井上氏は、「SAPのお客様は早ければ2020年に保守期限を迎えるところが多い。ただ、クラウドへ移行するとしても基幹システムだけに2~3年かかる可能性がある。そこで今から着手することを考えたいとの要望を数多くいただいている」という。両氏の話からも、佐藤氏が語ったように「市場がReady状態になってきている」ことがうかがえる。
ただ、SAP HANA on Azureのパートナー企業の顔ぶれをあらためて見ると、11社のうち9社がAmazon Web Services(AWS)のパートナーでもある。これは、基幹システムのクラウド化を手掛けることが可能なベンダーが限られていることを表している。そうした中で、パートナー各社にどうやってAzureを優先してユーザー企業に勧めてもらうのか。単刀直入に聞いたところ、佐藤氏は次のように答えた。
「それは最終的にお客様にAzureを選んでいただけるように努力することに尽きる。そのために、私たちとしてはAzureの強みであるエンタープライズレベルのクオリティやセキュリティ、コンプライアンスをはじめ、オンプレミス環境との共用、実績のあるディレクトリサービス、そして日本に根付いたクラウドであることを、パートナー企業とともにお客様に一層訴求していきたい。今回、SAP HANA on Azureにおいてパートナー各社から力強い賛同をいただけたのも、お客様がAzureを求めておられることの証しだと確信している」
日本マイクロソフトはSAP HANA on Azureの顧客獲得目標として、今後3年間で250社を掲げている。これを達成するために、パートナー企業の拡充も図っていく考えだ。1年ほど前に、SAP ERPの専門家から「国内のSAPユーザーは約2000社で、2020年にはそのうち半数がHANAなどで基盤を刷新し、さらにそのうち半数がパブリッククラウドへ移行する」との予測を聞いたことがある。この予測からすると、250社は果敢な挑戦といえそうだ。