日本株展望

業績好調でも建設・土木株の上値が重い理由

ZDNet Japan Staff 2017年02月09日 13時03分

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今日のポイント

  1. 建設・土木業界は、仕事量が豊富な中、粗利の改善が続いているため、業績は好調である。大手ゼネコンは軒並み最高益を更新してきている
  2. 足元の業績が好調でも、2020年以降に仕事量が減るリスクが意識されているため、建設・土木株の上値は重くなっている

 これら2点について楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

安藤・間(1719)

 安藤・間は2月8日14時に第3四半期(10~12月期)決算を発表。第1~3四半期(4~12月)の経常利益は前年比63%増の266億円と、同期間で最高益を更新した。

 好調な業績発表を受けて、同社株は発表後に売買高を伴って上昇し、2月8日は前日比28円(3.5%)高の825円と、昨年12月1日の高値につら合わせとなった。2月8日の終値で見た株価収益率(PER)は6.4倍と低く、株価は割安と考えられる。

 安藤・間は、2017年3月期の経常利益見通しを前年比46%増の340億円(最高益)のまま据え置いたが、第3四半期までですでに78%を達成している。建設・土木業界は、季節的に第4四半期(1~3月期)の利益水準が高くなる傾向があることから、2017年3月期の業績は上振れ含みであると予想される。

鹿島(1812)

 鹿島は2月8日12時に10~12月期決算を発表。4~12月の経常利益は前年比61%増の1083億円と同期間で最高益を更新した。

 業績は好調だったが、同社株は発表後に売買高を伴って売られ、2月8日は前日比24円(3.1%)安の754円となった。2月8日終値で見たPERは10倍と低く、株価は割安と考えられる。

 鹿島は、2017年3月期の経常利益見通しを前年比9%増の1240億円(最高益)のまま据え置いた。2016年3月期の経常利益が431%増益であったことと比べると、増益率が大幅に低下する見通しとなっていることが嫌気されたと考えられる。

 ただし、10~12月期までですでに通期計画の87%を達成しており、2017年3月期の業績は上振れ含みであると推測される。2017年3月期経常利益の市場予想は前期比17%増の1331億円となっている(アイフィス・コンセンサス予想)。

大成建設(1801)

 大成建設は2月8日14時に10~12月期決算を発表。4~12月の経常利益は前年比40%増の1096億円と同期間で最高益を更新した。業績は好調だったが、同社株は発表後に売買高を伴って売られ、2月8日は前日比9円(1.1%)安の791円となった。

 2月8日終値で見たPERは12倍と低いものの、2016年11月8日に起こったJR博多駅(福岡市博多区)近くの道路陥没事故の賠償問題が未解決であるため、投資しにくい状況だ。

 博多の道路陥没事故では、事故原因となった工事を施工した共同企業体(JV)代表の大成建設に賠償義務が発生すると考えられている。ただし、損害額などが未確定であるため、現時点で業績予想に織り込まれていない。

 大成建設は、2017年3月期の経常利益見通しを前年比7%減の1090億円のまま据え置いた。10~12月期までの経常利益が1096億円で、すでに通期計画の100.5%を達成している。賠償問題を考えないならば、今期の業績は上振れ含みであると推測される。2017年3月期の経常利益の市場予想は前期比1%減の1167億円となっている(アイフィス・コンセンサス予想)。

 賠償額が確定しないままでは、投資評価が難しい状態だ。

業績好調でも買われにくい建設・土木株、4つのリスク

 まだ10~12月決算を発表していない大林組(1802)と清水建設(1803)も業績は好調と予想される。建設・土木業界は、過去3年にわたり仕事量が豊富な中で粗利が改善し、業績好調が続いている。

 それでも、株価の上値が重くなっているのは、以下の4つのリスクが意識されているためと考えられる。

(1)2020年以降、仕事量が頭打ちになる可能性

 2020年まで仕事量は豊富だが、その後、頭打ちになる可能性がある。仕事量が減れば、過当競争が続く元の体質に戻るリスクもある。

 2020年はまだ3年先で、今からそれを議論するのは早すぎるかもしれない。ただし、そういうリスクがあることがわかっているため、建設株はPERで高い倍率に買われにくくなっている。

(2)低めの業績予想リスク

 2017年3月期は、2016年3月期に続き建設業の業績は好調だ。ところが、建設業には利益がたくさん出ることを外部に知られたくない体質がある。2016年3月期も2017年3月期も、期初には非常に低い業績予想を出しておいて、後から上方修正を繰り返している。

 2018年3月期も、期初は非常に低い業績予想をたててくる可能性がある。2017年3月期業績が好調でも、2018年3月期について減益の予想を出されると、株価が嫌気して下がる可能性がある。2018年3月期の業績予想が会社から出される5月頃は要注意だ。

(3)東京都関連の公共工事で価格が高過ぎると批判

 東京五輪や豊洲(築地新市場)関連の工事で価格が高過ぎると問題視する動きが出ている。一部に価格の決め方が不適切でなかったかと疑問の声がある。こうしたニュースフローがゼネコン業界にネガティブに響いている。

 近年、民間工事も公共工事も採算の改善が進んでいる。ゼネコン各社が施工能力いっぱいの中で選別受注をしてきた効果と考えられる。ただ、一部の公共工事については十分な競争が働いていないとの批判もある。

(4)未解決の賠償問題

 大成建設は、2016年11月8日に起こった博多陥没事故の賠償が未解決だ。三井住友建設(1821)などマンションくい打ち工事の不正問題での賠償が未解決の会社もある。

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