安田氏:実際に問題意識を持ち、業務改革をやり始めているところが増えてきているのは間違いない。ただ、その時に問題になるのは雇用の問題です。つまり、著しく生産性の低い従業員を整理できず、「新しいことをやろう、変えていこう」という時にそこがすごくネックになる。これってすごく深刻な問題です。
USはそれがスパッとできるのが大きいですよね。会社が変わるんだから、従業員を入れ替えるぐらいの勢いでレイオフとかをやったりする。レイオフすると、それと同じぐらいの人数を雇いますし、労働市場の流動化は必須ですよね。日本でも解雇規制を緩和するとか言われてますけど、実際にはあまり変わってない。そこもぜひ、一緒に議論をしてほしいなと思います。
小野氏:今はスピード感を持ってやらなきゃいけないのに、それについて日本は致命的に遅れていますよね。そこにキャッチアップしていかないと、競争力が落ちます。じわじわ変えているから、まったく変わっていないわけではないんですけど、そのスピード感でいいのかな。
セゾン情報システムズ常務取締役 最高技術責任者(CTO)小野和俊氏
和田氏:レイオフの話はやめましょう(笑)。企業がデジタル化とか新しい世代に進むことにたいして、どう考えているか。トップダウンでそういうことをKPI(Key Performance Indicators/重要業績評価指標)にしている組織は、われわれの話を聞こうとする。さっきの新規事業の話と同じで、その人自身がすごくコミットしていて、声が大きければ予算は通るし、話が動くんですよ。会社がそれ自体をミッションとして、ちゃんと取り組めばうまくいく。
既存の状態のままで「ちょっとやってみようかな」というのでは絶対に無理です。デジタル化・業務改革推進をやるための部署・ミッションがあって、そこにアサインされてる人が「私にとって、これを変えることがこの会社での最後の仕事だ」という気持ちを持っている場合は、けっこう話が進みます。最初のスタート地点では別に数億円の予算はいらなくて、数百万とかちょっとした金額からスタートできる。それにかんしては誰かが本気でやれば、意外とスムーズにスタートすると思うんです。まあ、そういう人がいればの話ですけど。
後藤氏:そうです。ネットビジネスでは一般的に当たり前のことです。もともとお金もないし、オンラインのサービスを使っていいもの・安いものに乗っかっていく。それはトップダウンで言ってくるかもしれない。日本ではCEOクラスが変わることはほとんどなくて、そういう場合はたいてい会社が業績はひどくなる。
私はUSにいた時に、とりあえず従業員10パーセントカットということがありました。従業員を解雇すればコストカットになるので業績が回復し、株価が上がる。ほとぼりが冷めるとまた雇うんですけど、とにかくそうやって新陳代謝する。別に、やめさせられた人が悪いということじゃない。でも日本の場合、それが当たり前じゃないから厳しいですよね。人というのはほとんど変わらない。だから、採用した時点であきらめなきゃいけないと思います。
第6回へ続く。