IoTは、広く普及したデバイスと、そうしたデバイスから生み出される新たなデータの流れに基づく新しいビジネスモデルを可能にし、デジタル変革の大きな推進力となる可能性を秘めている。ただし、その未成熟なエコシステムと付き合っていく覚悟が必要となる。
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企業にとって、現在のIoTはもろ刃の剣と言ってもよい存在となっている。あらゆる種類のデバイス(「モノ」)をインターネットに接続し、生成されたデータを分析することで製品やサービスの効率を大幅に向上させ、新たな収益源を生み出し、運用コストを削減するためのさまざまな機会がもたらされる反面、この市場はまだ成熟しておらず、アーキテクチャやテクノロジ、標準、ベンダーのいずれを見ても確固たるものが存在していないため、投資のリスクは高くなる。特に、セキュリティはIoTにおいて大きな懸念となっている。
米調査会社GartnerのNick Jones氏によると、IoTは「ロングテール」に分類され、「モノ」は自動車の車載サブシステムからセキュリティカメラ、Bluetoothビーコン、スマート衣服、農作物用センサに至るまでさまざまだという。近い将来には、「コンシューマライゼーション」が重要な役割を果たし、多様なスマートデバイスが企業で利用されるようになる結果、ITマネージャーは頭痛の種を抱えることになるだろう(「Bring Your Own Thing」、すなわちBYOTという時代の到来だ)。
一方、企業における「公式な」IoT配備は、ビジネス上の定量的な価値をもたらす、比較的限られた数のユースケースに集中するだろうとJones氏は述べている。これらには、予知保全(例えば暖房換気空調(HVAC)システム)や、スマートビルの省エネルギー対策、自動補充(燃料タンクからビールだるに至るまでのさまざまなもの)、自動車のフリートマネジメント、資産や要員の監視が含まれる。
さらなる未来に目を向けると、IoTはデジタル変革の大きな推進力となり、広く普及したインターネット接続デバイスと、それらデバイスによってもたらされるデータの流れに基づいた新たなビジネスモデルを実現できる可能性を秘めているのは間違いない。最高情報責任者(CIO)はこのような長期的な価値を見据えながら、今日の未成熟な(したがって混乱するところもある)IoTエコシステムからビジネス上の価値を引き出す必要がある。
今日のIoT市場の状況はどのようなものだろうか?リサーチおよび分析を手がけるVenture Scannerは2016年10月、同社が動向を捕捉していたIoT関連の新興企業1428社を20のカテゴリに分類した。これら新興企業は46カ国にまたがり、獲得した資金は総額250億ドルにも上っていた(2017年1月時点で、その数は47カ国にまたがる1544社に増え、獲得資金総額は270億ドルに達している)。
数という点で見た場合、IoT企業はコンシューマー分野に偏っており、カテゴリの上位5つには家庭用品やヘルスケア、ライフスタイル、フィットネスが含まれている。
データ提供:Venture Scanner/グラフ:ZDNet
しかし、獲得した資金の平均額に目を向けると、エンタープライズ分野が1社あたり約7800万ドル、エネルギー/公共公益分野が1社あたり約6900万ドルとなっており、その他の分野を大きく上回っている。
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