AI(人工知能)を活用する場面が増えている。ビッグデータの蓄積と超高速計算機が安価に手に入ることが背景にある。その活用に挑戦するAIベンチャーの活躍も見逃せない。そんな1社、メタデータの野村直之社長は「人を賢くし、創造性を豊かにするソフトを開発する」と話す。同社が注力するソフトを探ってみる。
ホワイトカラーの生産性を100倍にするメタデータの取り組み
メタデータの野村社長は、自然言語処理などAI関連の研究開発に携わって30年以上になる。東京大学を卒業後に入社したNECで機械翻訳、ジャストシステムで検索エンジン、リコーで文書画像認識などと、「ホワイトカラーの生産性向上に一貫して取り組んできた」という。
その経験とノウハウを生かして、2005年12月に設立したメタデータの目的も、「ホワイトカラーの生産性を10倍、100倍にするパッケージソフトを開発する」(野村社長)こと。マッシュアップやAPIなどを駆使した新しいソフトやサービスを創り出そうとし、まず医療情報関連の開発に取りかかった。だが、「米グーグルが無償提供することを知り、巨像に踏みつぶされる」と思った野村社長は開発を中止した。
その後、商品化した1つが、テキストマイニングツールのAIポジショニングマップだ。カスタマーセンターやソーシャルメディア、アンケート回答などから顧客の声を分析し、商品やサービスに対する本音や競合商品との比較などを可視化するもの。
具体的には、書かれている内容がネガティブなのか、ポジティブなのかといった見方、意見を7段階で判定したり、10万以上の日本語語彙を1万種の意味カテゴリーに区別、認識したりする技術などを活用する。機械学習も使って、たとえば人材派遣会社が「派遣スタッフが派遣会社のどんな点を、どう評価しているか」を調べて、次の一手に活かす。
実は、AIポジショニングマップは「アンケート分析Pro、VoC分析AIサーバ、つぶやき分析などと名称を変えた出世魚」(野村社長)だという。
このネガポジと意味カテゴリーは、APIとしても提供する。APIには約20種あり、ネガポジAPIの拡張版である感情解析APIは「好ましい、嫌い」「嬉しい、悲しい」「怒り、怖れ」の3軸で、それぞれを7段階で数値化する。意味カテゴリーAPIは、たとえばボーナスの使い道を、ソーシャルメディアなどからローンの返済が増えているのに対して、旅行が減っているなどと変化を読み取り、次の展開を考える。大量テキストを要約するものともいえる。
もう1つの主力ソフトは、マッチングエンジンになる。たとえば、新規ビジネスの立ち上げに伴う人材の最適な配置、必要な人材採用に使う。求職者10万人と求人企業10万社の組み合わせから、事業やビジネスにふさわしい人材を探し出す時間はわずか10秒以下だという。
金融機関なら、与信や融資の評価に使える。数百万、数十万の過去の成功と失敗の事例から対象企業に近いものを見つけて、与信や融資を判断する。「使えば、使うほど賢くなる」(野村社長)これらソフトの提供はクラウド、オンプレの両方を用意する。