人工知能(AI)に関しては刺激的な話題が多い。Gartnerは、2017年の10大戦略技術トレンドのトップにAIを挙げた。同社の考えでは、人工知能の技術は転換点に達しており、あらゆるサービス、もの、アプリケーションに影響を及ぼしつつあるため、2020年頃までは、この分野が競争力のあるITベンダーの主戦場になるという。
企業の変革を支援する企業であるthree25のマネージングディレクターChristian McMahon氏は、AIに対する関心が最近急激に高まっていることを認めているが、同時に警告の言葉も投げかけている。
「あらゆる大手企業やアクセラレータやベンチャーキャピタリストは、足がかりを見つけようと必死だ」と同氏は述べている。「しかし現在のAI市場は、これからブレークスルーを起こすテクノロジが出てこようとしている段階にあるとは思わない。活気のある市場で、具体的な実体のあるものというよりは、むしろ概念的なものに思える」
カムデン区議会の暫定最高情報責任者(CIO)を務めるOmid Shiraji氏も、同様の感想を持っている。同組織は大量のデータを所持しており、その知識を複雑なニーズを持つ人々に役立てようとしている。Shiraji氏は、AIはデータから洞察を得るためのブレークスルーになる可能性があるものの、CIOは価値創造を重視するべきだと述べている。
「こういったプロジェクトのビジネスケースは簡単なものではなく、未知の領域に踏み込むことになる可能性がある。この種のプロジェクトに投資しようとすると、ROIではなく直感に頼らざるを得なくなる場合も出てくる」とShiraji氏は言う。
Gartnerは、AIを利用するプロジェクトのリスクを取る企業は将来報われると述べ、1つか2つの影響の大きいシナリオで実験を行うことを検討すべきだとしている。では、新しい試みに取りかかろうとする組織は、AIのビジネスケースをどのように設定すべきなのだろうか。この記事では、2人のITリーダー(民間部門から1人、公的部門から1人)の意見を紹介する。
可能性を評価する
世界的な法律事務所であるLinklatersのCIO、Matt Peers氏は、ビッグデータの利用と、大きくなりつつあるAIの重要性を比較評価している。同氏によれば、ビッグデータ利用の成功は、所持している情報を最大限に生かせるかどうかにかかっている。そして、創業175年のLinklatersは、ほかの組織よりも多くの知識を持っている。
Peers氏は、Linklatersの長い歴史を競争上の優位に変えられるはずだと語る。法律家は判例や過去のプロジェクト、社内人材の専門性に通じている必要がある。同氏は、AI分野の進歩が、より洗練された調査のためのアプローチを生み出すのに役立つはずだと考えている。
「ビジネスにAIを導入するためには、組織の進化を必要とする」
提供:iStock