「成功への鍵は、正しい情報を素早く届けることだ。AIのために開発されつつあるツールの一部は、ビッグデータを検索するのに役立つ。市場に出回っている技術の多くは、契約書の読み込みや解析を得意としており、法律関係の大量のデータを検索可能にしてくれる」と同氏は述べている。
同氏は、近い将来重要な法律分野の契約書をデジタル化して検索できるようにすることが、一般的になると予想している。Linklatersはすでに、市場に出回っているサービスの分析を支援して、これらの技術がビジネスに対してどう影響しうるかを検討する、AIに関するワーキンググループを組織している。
「一部の重要分野の企業は、すでに動き始めている。当社は過去18カ月間、さまざまな人々から話を聞き、デモを調べ、概念実証研究を行って、チャンスを評価するために多くの時間を投じてきた」とPeers氏は言う。
Peers氏は、AIが法律家の仕事に変化を促す可能性もあると認識しているが、それには文化的な課題もあると予想している。上級パートナーは、法的文書の細部を検討するために多くの時間を費やしている助手を信頼している。数秒間で同じ仕事を行うコンピュータを信頼することは、これとは異なる形の依存だ。
「法律家や法律事務所の評判がかかっていることを考えれば、これは大きな変化だ。ビジネスにAIを導入するためには、組織の進化を必要とする。法曹界には、当面の間はAIが役に立たない問題が数多く存在することを知っておかなくてはならない。コンピュータが信頼できる助言や意見を提供できるようになるまでには、かなり長い時間を必要とするだろう」とPeers氏は述べている。
命を救うためのデータ利用
ロンドンにある世界最大の眼科専門病院財団Moorfields Eye Hospital NHS Foundation TrustのIT部門で臨時の責任者を務めるToby Clarke氏は、AIは公費負担の組織の仕事に大きな影響を与えると述べている。Moorfields病院は、DeepMind Healthと協力し、同財団が持つ100万件の匿名化された目のスキャン情報を共有することを含む研究プロジェクトを進めている。
このプロジェクトは、時系列的なスキャン情報を使用するもので、将来治療を改善するために研究成果を生かせる可能性がある一方、現在の患者にはメリットはない。しかし、この取り組みを通じて得られた知見が、異常の早期発見につながり、予防可能な目の病気を減らすために役立つ可能性があると期待されている。
Clarke氏はDeepMindのプロジェクトについて、「この情報に対して彼らが行っていることは、本当に素晴らしい。これは最先端の試みであり、大きな違いを生むだろう」と述べている。