日本株展望

米景気敏感株を見直し--ブリヂストンはトヨタより有望? - (page 2)

ZDNet Japan Staff 2017年02月22日 12時50分

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ブリヂストンの方がディフェンシブと考える理由

 3つの理由がある。

(1)ブリヂストンの方がトヨタより新車販売変動の影響が小さい

 自動車販売には好不況の波があり、トヨタの利益はその影響を受けて大きく変動する。ブリヂストンの業績も新車販売の影響を受けるが、その影響はトヨタほど大きくない。

 タイヤメーカーでは、更新タイヤ(取替用のタイヤ)の利益率が新車用タイヤより高く、更新タイヤが重要な収益源となっているからだ。更新タイヤは、世界の自動車保有台数が拡大しているために、新興国を中心に安定的に成長している。

(2)トヨタは米保護主義のターゲットとなりやすい

 日本車にとって最も重要な市場である米国で、トランプ大統領が保護貿易主義を前面に出していることが、日本の自動車メーカーにとって重大なリスクとなっている。特に、日本の自動車産業を批判する発言が目立つことが気になる。

 トランプ大統領による日本の自動車産業批判は事実に基づかない部分が多いといえる。たとえば、日本の自動車が米国に大量に輸出される一方、米国の自動車が日本でほとんど売れないのは「不公正な競争条件のため」とトランプ氏は主張しているが、この主張は関税について言うならば誤りだ。

 日本は自動車の輸入に関税をかけていない。一方、米国は自動車の輸入に2.5%の関税をかけている。トラック輸入には25%の高率関税をかけている。

 ただ、米国が日本の自動車を叩き始めると、そこからは理屈の通用しない世界に入る。2009~2010年に北米で“トヨタバッシング”がヒートアップしたことがあった。トヨタ車に特に技術的な問題がなかったにもかかわらず、トヨタ車は急加速するので危険というバッシングが全米に広がり、トヨタは大規模な自主的リコールに追い込まれ、巨額の課徴金を支払わされた。

 ブリヂストンもバッシングの対象となるリスクがないとは言えない。ただし、今はそのリスクは低いと考えられる。ブリヂストンはタイヤ世界首位で、日本車だけでなくアメリカ車にも使われている。世界中の幅広いメーカーで使用されるタイヤであるため、日本車のようにターゲットとはなりにくいと考えられる。

 ブリヂストンのタイヤは、高品質・高価格のものが多く、米国内で価格破壊を先導しているわけではない。米国でたびたび問題になるのは低価格の中国製タイヤの輸入が増えることだ。今後、政治的にターゲットになるとしたら中国製タイヤの輸入で、米国生産比率の高い(輸入もある)ブリヂストン製タイヤはターゲットとなるリスクが低いと考えられる。

 万一、米国が輸入タイヤに国境税をかける場合、中国タイヤが一番大きなダメージを受けると考えられる。ブリヂストンも輸入タイヤではダメージを受けるが、安い中国タイヤの輸入が減ると米国内でタイヤ価格が上昇しやすくなるので、米国内で生産するブリヂストン製タイヤには恩恵が及ぶ。

2009~2010年の北米でのトヨタバッシングの背景

 トヨタバッシングは、米国民の日本車への反感が作り出したものと考えられる。2005年ごろ、米自動車大手3社(GM、Ford、Chrysler)が経営危機に陥った時、日本の自動車大手3社(トヨタ、ホンダ、日産自)は米国で快調にシェアを拡大していた。その時、日本車を非難する声は表立って出ていなかったが、日本車への反感が静かに蓄積していたと思われる。

 トヨタは、北米での言いがかりのようなバッシングと戦わず、ひたすら低姿勢で陳謝を続け、大規模リコールを行い、巨額の制裁金支払いに応じた。そのうちに米国内でトヨタ叩きの行き過ぎを非難する声も増え、トヨタ車の米国内での人気は回復した。

 ちなみに、2012年に中国で起こった大規模な反日デモでも、日本の自動車メーカーが不買運動のターゲットとなった。日本から中国へ日用雑貨を輸出している企業はターゲットとなりにくかったが、自動車は目立つのでバッシングの対象となった。

 米国だけでなく、世界中に自国中心主義が拡大している。保護貿易、貿易戦争が世界的に広がると、自動車は目立つのでターゲットになりやすいと言える。

(3)次世代エコカーでハイブリッド車より電気自動車が優勢になりつつある

 自動車用の蓄電池の性能が大幅に向上したため、電気自動車が1回の充電で走行できる距離が大幅に伸びた。それにより、次世代エコカーとして電気自動車を優先する国が増えた。自動運転技術の進歩も、自動車の電装化、電気自動車の普及を後押しする。

 次世代エコカーとして、ハイブリッド車を中心に推進してきたトヨタや本田など日本勢に逆風だ。

 現時点で議論するのはまだ早すぎるが、遠い将来、ガソリン車が減り、電気自動車が主流になる時代が来ると想定すると、日本の自動車業界はダメージを受ける。ガソリン車に使われる内燃機関が不要になるリスクがあるからだ。内燃機関を製造するための部品技術で優位にある、日本の自動車産業全体にマイナスとなる。

 ただし、このリスクとタイヤメーカーは無縁だ。次世代自動車が何になろうとタイヤが必要なことは変わらないからだ。

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