代金の支払いとものの引取
買うものを選択したら、それをレジなどに持っていき・あるいはカートに入った状態にして、代金を支払う(5)。もしくは支払い方法を選択し、後日精算などする。店舗側は、支払われた代金あるいは支払い方法を確認し、売買が成立する。現金での支払いの場合は釣り銭の確認などの手間も入るが、クレジットカードや電子マネーなどでの支払いならばそれは回避される。
そうして、買ったものは自分のものとなり、持って帰るか、あるいは配送で後日、指定した場所に届けられる(6)。
ウェブでの買い物の場合は一度利用したサイトであれば、支払い方法や配送先などの情報を登録しておくことで、買う度に一から指定する手間を省けるようになっていることが多い。また、実店舗でも、会員証やポイントカードなどの提示により、配送にする旨だけ伝えれば登録された住所に届けられるようになっている場合もある。

計算機システムやネットワークによる手間の軽減
計算機システムやネットワークの補助がなければ、おおよそこれらのプロセスはそれぞれで一番手間の掛かる道を通ることとなる。ネット上のECサイトが買える場所に行くまで、あるいは買いたいものにたどりつくまでの手間を大きく短縮しているのは言うまでもない。
実店舗でも、ネットワーク化された在庫管理システムによりその店舗での在庫の確認のみならず近隣の系列店舗の在庫も簡単にできるようになっていることも多く、物理的に移動しながら探し回る手間が軽減されている。支払手続きや配送の手続きなども、店舗のシステムがネットワーク化されることによって、店をまたがった各種情報の登録など、ECサイトにあるようなサービスが受けられるようになっている。実世界の環境がある程度ウェブ化している、と言ってもよいであろう。
Amazon Dash Button
ネットワークのない時代に比べて買い物にまつわるかなりの手間が軽減されたとは言え、「2.買うための場所もしくはウェブページに行く」や「3.買うものを探す・選ぶ」の手間はまだ残っている。これらを一気に省いてしまうのが、Amazon Dash Buttonである。
日用品の中でも切らしたくない消耗品は、残量が少なくなった時点で忘れずに買っておきたい。残量が少ないのに気づいた時点が「買いたいものが生じた」ときである。Amazon Dash Buttonは、家の中のその日用品を使っている場所の近くに設置しておくことで、「買いたいものが生じた」→「買うための場所へ行く」までの距離的・時間的ラグを最小化し(忘れる心配もない)、さらにはボタンを押した時点であとは最後の「買ったものの引き取り」のステップのみになる。途中の手間は全て省かれるのである。
もちろんその分、買えるものの選択は限られるし、継続的に買うものでないと使えないし、買う際に他の店舗と価格などの比較や、たまには他の製品を買ってみる、といったことができない、などの制約は受ける。ユーザーによってはまったく合わないデバイスかもしれない。とはいえ、うまく合えば、全体のUXとしてはかなり良いものとなるであろう。