AIを企業に組み込む
一方、Steven Hillion氏の経歴は違うルートをたどっている。カリフォルニア大学バークレー校で数学の博士号を取得した同氏は、学術的なバックグラウンドも持っている。しかしHillion氏は、自分の知識を現実世界の問題解決に応用したいと考え、早い時期から産業界に身を投じた。同氏はGreenplumのアナリティクス担当バイスプレジデントを経験したあと、Alpine Dataを共同設立し、現在は同社の最高製品責任者(CPO)を務めている。

エンタープライズソフトウェアへのAIの組み込みは将来有望な取り組みだが、高度な問題に取り組む以前に、平凡な問題が障害になる。
Hillion氏の考えでは、今はエンタープライズAIの「第1世代」だ。確かにツールは便利ではあるものの、AIが備えている潜在能力という点では一般的だ。しかしいくつかの企業は、すでに第2世代に移行しつつある。第2世代のAIは、データサイエンスの操作を可能にするツールやプラットフォームの組み合わせから成っている。例えば、Morgan Stanleyの「3D Insights」プラットフォームなどのカスタムソリューションや、Salesforceの「Einstein」のような既成のソリューションがこれに当てはまる。
多くの分野では、従業員(やその上司)が、その日行うべき仕事を決める。その後アプリにログインし、チェックリストを調べたり、BIレポートを作成するなどの作業を行う。これに対し、既存の業務データから、特定の従業員がその日に行うべき、もっとも優先順位が高い(あるいはもっとも適切な、あるいはもっとも収益性の高い)タスクを自動的に判断するためにAIを使用し、そのタスクを適切なアプリケーションの中で直接行うようにすることもできる。
成功するためには、AIをあらゆるアプリや業務に組み込み、より大きな事業目標を達成するために、AIが人間の行動を決められるようにすることだ。この未来は、多くの人が考えているよりも早く実現するだろう。われわれはすでに多くの顧客を相手にこの取り組みを進めており、AIを利用した機能を、徐々にユーザーの日常的なワークフローに組み込んで、ユーザーの生産性を向上させてきた。
もちろん、これは簡単ではない。実際、AIで価値を生み出すための壁としては、複雑なアルゴリズムに取り組むことと同じくらい、セキュリティやデータのプロビジョニング、住所のマッチングなどの平凡な問題を解決することが大きな問題になっている。
汝のデータ(とアルゴリズム)を知れ

AIの支配に身を委ねる前に、AIの仕組みを理解することが重要かもしれない。
では、映画「ブレードランナー」の原作のように、アンドロイドは電気羊の夢を見るのだろうか。そして、それは企業に影響を与えるのだろうか。現時点ではまだ明確な答えは出ていないが、確実に言えるのは、Bishop氏とHillion氏の両方が、それは最初に心配すべき問題ではないと考えているということだ。一方で、データとアルゴリズムの透明性は、心配すべき問題の1つかもしれない。