サイボウズが決算と事業戦略発表--「海外事業への積極投資」

大河原克行

2017-03-01 09:03

 サイボウズは2017年度の事業計画について発表した。同社の青野慶久社長は、5月にGaroonにカスタマイズ機能を追加すること、11月からKintone認定資格制度を開始することを明らかにした。1997年8月の設立以来、今年は20周年を迎える節目の年となる。青野社長は「20周年を記念した特別企画を進めている。期待してほしい」と述べた。

 2017年度の連結業績見通しは、売上高が前年比10.7%増の89億円、営業利益が35.4%減の3億3300万円、経常利益が42.3%減の3億3900万円、当期純利益が50.3%減の1億5200万円とした。

サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏
サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏

 サイボウズの青野社長は、「中国・上海の子会社のクラウド売上げの計上方法を年額一括から、月次案件分計上に変更。この影響を除けば、90億3100万円の売上げ計画になる。状況に応じて柔軟に投資を増減していく考えであり、経常利益については現時点でこう見ているという認識でいてほしい。適宜情報を開示していく」とした。

 また、青野社長は、2017年度の事業方針として、「エコシステムの強化」「海外事業への積極投資」「新規事業への取り組み」の3点を挙げた。

 エコシステムの強化では、GaroonとKintoneを重要製品と位置づけ、Garoonでは、JavaScript、REST API、Webhookを活用することで、カスタマイズ性を高め、Garoonのスケジューラを他のクラウドサービスと連携させるなど、カスタマイズ性を高める。「Garoonを導入している大手企業から要望が高かったもので、多様な企業ニーズに応えるグループウェアに進化させる。これまでのGaroonパートナーだけでなく、Kintoneのパートナーとも連携し、エコシステムの動きを一気に加速する」とした。

 また、Kintoneでは、ユーザーイベントであるKintone hiveを、東京だけの開催に留まらず、名古屋、大阪、福岡でも開催し、「これまでは半分のKintoneユーザーが東京に集中していたが、Kintoneを利用した成功事例を全国に横展開していく」という。

 11月から開始するKintone認定資格制度では、限定したパートナーなどを対象に今年春からβ版をスタート。「この資格を持っていると就職に有利であるとか、所有しているから来てほしいといったように、採用の条件になったり、個人のバリューを高めることができる資格に育ていきたい」とした。

 「海外事業への積極投資」では、中国、東南アジア、オーストラリア、米国での取り組みについて説明。中国においては、現在、日系企業を対象に700社への導入実績を持つことを明らかにした。そのうち、500社がGaroon、200社がKintoneの導入だという。「当初は上海に拠点を持つ日系企業が対象であったが、深せん、香港、蘇州などへと、面展開ができるようになってきた」とした。

 東南アジアでは、バンコク、シンガポール、クアラルンプール、ジャカルタ、ホーチミン、ハノイ、マニラ、ヤンゴンなどの主要都市において、パートナーと連携。日系企業を対象に150社の導入実績があるという。

 オーストラリアでは、現地の複数企業とともに共同出資した販売パートナー会社「Kintone Australia Pty Ltd」を、2016年9月に設立。同様に日系企業へのKintoneの導入を促進するという。

 また、米国ではこの1年で3倍以上となる約100社への導入を完了。現地企業に対しても導入が始まっている点が、他の海外展開とは異なる。「ガートナーのマジッククウドラントのaPaaS(application platform as a service)部門において、全世界の16社のなかに唯一、サイボウズが掲載された。まだニッチプレーヤーの位置だが、図面の上ではあと10数cmで世界一になれる」としたほか、「米国では、Low-code developmentが新たなトレンドになりつつある。日本にもこの流れがくるだろう。盛り上がりに間に合うように、米国に進出し、勝負できる環境にいる。日本代表としてがんばりたい」と述べた。

 一方で、「新規事業への取り組み」では、「サイボウズの企業理念は、チームワークあふれる社会を創ることと、チームワークあふれる会社を創ること。そのための実現において、グループウェアだけで足りないと思えば、ほかのことをやる必要がある」として、社内で培ってきたチームワークメソッドを社外に提供していく活動を開始。具体的には、元陸上男子選手の為末大氏が取り組む「TRAC」との協業開始や、地方創生を目指して地域の再チーム化を促進する「地域クラウド交流会(ちいクラ)」の開催、島根県益田市におけるKintone活用による地域創生の取り組みなどについて触れた。

 なお、中小企業向けグループウェアの「サイボウズOffice」の導入は約5万3000社、大企業向けグループウェアの「Garoon」は約4000社、アプリ構築プラットフォーム「kintone」の導入実績は5500社以上、メール共有システム「メールワイズ」は約5000社、無料グループウェア&チャットの「cybozu Live」の利用者は約170万人に達したという。また、cybozu.comの国内外における有料契約数は1万7000社を突破したという。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]