今後専門性が極めて高く、動きが速い新世代のスタートアップとの競争に直面したときに、企業が生き残れるかが決まる上で重要な役割を果たすのは、向こう数年間で進む新たなテクノロジの導入を、これらの旧来の大企業がどう乗り切っていくかということだ。当然だが、競争相手のスタートアップには、レガシーシステムの維持やアップグレードを行う必要はない。
Red Hatのインフラ事業担当シニアバイスプレジデントTim Yeaton氏は、米ZDNetの姉妹サイトであるTech Pro Researchに対して、2016年10月に次のように述べている。「5年から10年以内には、開発者が従来からあるものに価値を付加することで、どれだけ抽象化できるか、どれだけ自動化できるか、どれだけマシンツーマシン(M2M)と人工知能を活用できるかが問題になると考えられる。これらが、今後加速していく分野だろう」。この新しい世界では、CIOはITの取り組みや発展を見極めたり、それらを可能にしたりする役割になっていくという。Yeaton氏はこの役割を「リソースの仲介者」と呼んでいる。
では、デジタル変革に関する最近の調査を見てみよう。
デジタル変革に関する企業の現状
SugarCRMとSquizの依頼でForresterが実施し、2016年3月に発表されたレポート「Leading Digital Business Transformation」では、オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、インド、シンガポール、英国、米国の大企業に勤める410人の企業幹部に対して調査している。金融サービス業、保険業、政府機関、高等教育機関、メディア及び出版業、小売業が対象だ。
主な調査結果は次の通りだ。
成熟したデジタル企業は少ない(調査対象企業の11%にすぎない)。これらの企業では、デジタル化のビジョンと戦略をCEOが主導している(CEOの41%が自身でデジタル化戦略を策定しており、59%が戦略を理解し支持している)。
顧客体験はデジタル変革の取り組みの指針となっている(成熟したデジタル企業の原動力トップ3は、顧客体験の改善、イノベーションの加速、製品化に要する時間の短縮)。
文化的および組織的な問題は、成熟したデジタル企業にとっても大きな課題になっている(成熟したデジタル企業の43%が、変革を効果的に進める上での最大の障害は、デジタル化の事業を牛耳ろうとする部門同士の縄張り争いだと考えている)。
デジタル化には、企業の俊敏性を高める必要がある(成熟したデジタル企業の94%が、システムや業務プロセスの俊敏性を高めることで、デジタル化による破壊的改革の脅威に対応しようとしている)。
Forresterのレポートから分かる重要なポイントの1つは、成熟したデジタル企業が、明らかにアナリティクスによる顧客体験の改善を重視していることだろう。
成熟したデジタル企業は、明らかにアナリティクスによる顧客体験の改善を重視しているようだ。
提供:Forrester
2016年9月には、Altimeterのレポート「The 2016 State of Digital Transformation」(同社がこのテーマで公表した2つ目のレポート)が公表された。 このレポートでは、528人の「選ばれたデジタル変革戦略の実践者と、その企業の幹部」に対して調査している。幅広い業界に属する、従業員250人以上の企業(米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ)が対象とされた。