「労働人口が不足する日本ではAIを活用せざるをえない」--アクセンチュア

飯田樹

2017-03-10 07:00

 アクセンチュアは2月20日、「クラウドによるイノベーションの実現」と第した、企業の情報システムの導入・運用関係者を対象としたセミナーを開催した。本記事では、当日のプログラムの中から「破壊的イノベーションとビジネス革新」「NewITがもたらす世界 AI&ロボティクスがもたらす生産性向上の世界」の2つの発表についてレポートをする。

「2016年は“人”が重要になった年」


アクセンチュア チーフ・マーケティング・イノベーターの加治慶光氏

 アクセンチュア チーフ・マーケティング・イノベーターの加治慶光氏による「破壊的イノベーションとビジネス革新」は、現在「VUCA(Volatility:不安定、Uncertainty:不確実、Complexity:複雑、Ambiguity:曖昧)の波」が迫っているという話題から始まった。この状況下では「ライト・フットプリント経営」が求められるのではないかとのこと。一つのビジネスに深く踏み込むのではなく、いくつかのフットプリント(足あと)を軽めにつけ、意味のあるものに注力するという方法だ。

 加治氏によれば、「SMACS(Social、Mobile、Analytics、Cloud、Sensor)」などの技術によりデジタル化をこれまでより容易に実現できる環境が整い、新たなビジネス潮流が生まれているという。「ソーシャルメディアによるマーケティング、モバイルによるセールスの仕組みの安定化、データ分析、クラウドローンチによる初期コストや撤退コストの削減、センサでの見守りと情報フィードバック、そしてAIによってまた賢くなるという新しいビジネスモデルができています」

 そこで、同社が過去10年程度にわたり世界中の3000人以上の役員レベルの人への調査をしているレポート「Accenture Technology Vision」の内容を紹介。「2013年は全てのビジネスがデジタルになると言われ、2014年はAirbnbやUberなどの破壊者が現れました。2015年には破壊者を見習った企業が自分たちのビジネスにその考え方を取り込んだことで垣根がなくなってきたのは実感に近いかと思います。そして、2016年は人が重要というメッセージを出しました」

 2016年のトレンドとしては、「インテリジェント・オートメーション」「流体化する労働力」「プラットフォーム・エコノミー」「破壊を予期する」「デジタル時代の信頼」の5つがあったとのこと 。なかでも後半の3つがポイントになるという。

 「プラットフォーム・エコノミー」とは、「つながって」「共に作り上げ」「スケールさせる」という3つの条件を満たし、ユーザーコミュニティ・パートナー・開発者で共に価値を創造する新しいビジネスモデルを指す。プラットフォームとエコシステムの間でのループが続き、“人”のニーズが起点になるとのこと。プラットフォームの価値を高めるには、顧客ベース、データを分析する力、優れたオペレーション、物理的なハードウェアが必要な要素だという。

 「破壊を予期する」というのは、最近では破壊者が現れて大企業が反応すると、どこから破壊が起こるかが予想できるようになってきたことを指す。業界の垣根はすでに壊されており、リーダーたちはこれまで以上に「予測不能な未来」を逆説的に「予測」しているという。

 最後は「デジタル時代の信頼」。ソーシャルメディアの拡大で一人ひとりの発言力が増大している一方、IoTの進行による市場観察プラットフォームも確立しており、「市場と企業の相互観察社会」が発生している。そこでは、「トラスト」が鍵となり、透明性が求められるようになるとのことだ。

 テクノロジが変化するなかで、破壊的イノベーションを生み出すためのポイントとして、加治氏はリンダ・グラットン『ワーク・シフト ―孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>』での理論を取り上げた。イノベーションの創造のために「比較的少人数の信頼できるメンバー」であり、「頼りになる同志」という意味での“ポッセ”(仲間)と、「自分のネットワークの外縁部にいる人」で構成され、「大きなアイデアの源」となる“ビッグ・アイデア・クラウド”という2つの人間関係が必要になるのではないかと指摘。働く人の数が減っている日本では、「AIを新たな働き手として捉え、強化すべき領域での活用を進める」必要があるのではないかと締めくくった。

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