「何を機械が担い、何を人間がやるか考えなければならない」
アクセンチュア デジタルコンサルティング本部 アクセンチュア・デジタル・ハブ統括 マネジング・ディレクターの保科学世氏
続く2番目のプログラムでは、「NewITがもたらす世界 AI&ロボティクスがもたらす生産性向上の世界」として、アクセンチュア デジタルコンサルティング本部 アクセンチュア・デジタル・ハブ統括 マネジング・ディレクターの保科学世氏が登壇した。
保科氏は「今後世界で起きる最大の外的な変化は、AIの能力が人間を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)ではないかと考えている」として発表を始めた。そのため、「人間と機械がいかに共存して、何を機械が行い、何を人間がやるか考えなければならない」と課題を示した。AIはスピードと知識量、大きなデータの解析を得意としており、価値判断や社会的要請の判断など絶対的な正解がないものや、人への共感、コミュニケーションでの柔軟な対応は、人間が対応した方が良いという。
「日本の場合、少子高齢化の影響で2030年頃には1100万人の労働力が不足すると言われています。女性、外国人、若者などの就労環境改善の取り組みはありますが、ロボティクス、AIを必然的に取り入れなければ、日本の労働力不足は補えません」
従来予測の2035年の各国のGVA成長率では、日本は世界の先進国と比べて最低レベルになるとされている。だが、AIを活用した場合には、米国の従来予測を上回る成長率となるため、日本におけるAIの活用は圧倒的に重要だと考えられるという。
これらを前提として、保科氏は「Intelligent Automationの進化」を説明した。最初はExcelのマクロなど「単純作業の自動化」に始まり、一連のプロセスの自動化である「RPA」、分析業務の自動化である「Analytics」、そして人間の認知機能も代替する「Artificial Intelligence(AI)/Cognitive Computing」に至るとのこと。
「人手不足のところでは2段階目がボリュームゾーンで、企業の業績を上げるのに寄与するのは3段階目です。人間がやっていたことを機械で置き換えられれば、コストの削減になり、RPAの導入でヒューマンエラーがなくなれば品質が上がります。人間が無理をしていた部分が機械に置き換わり、よりモチベーションの上がる作業をできるようになるのです」
保科氏は続けて、いくつかの例を紹介。需要予測に基づく自動発注・在庫補充最適化をするAFS(アクセンチュア・フルフィルメント・サービス)では、人間の作業は自動化しつつ、売上向上に寄与する。また、AIアドバイザーの「Accenture myWizard」では、6人の「AIエージェント」が、プロジェクトの全体管理やアナリティクス活用のアドバイス、プロジェクトの監視・モニタリングを実施しており、仮想エージェントと会話しながら共同作業をすることができるとのこと。
また、お客様サポートをバーチャルアシスタントが担い、AIでは対応できない時に人間に移行する「Service-Desk Virtual Assistant」では、人間とAIが強調して対応した場合に、最も高い顧客満足度を得られたという。「いかにAIと人間の対応を上手く組み合わせるかがポイントになる」とのことだ。
一方で、今はAIへの評価が過剰になっている面もある指摘した。人間がサポートする部分との組み合わせ方や、良い技術パートナーを見つけることも大切とのこと。いかに良いデータを使ってAIを成長させていくかも重要になるという。
保科氏は「労働人口が不足しており、AIを活用せざるを得ないのが日本ですが、裏を返せばAIを試せる状況です。日本の良いところを生かして、いろいろなプレーヤーと連携しながら新しいサービスを提供していきたい」と締めくくった。