理化学研究所(理研)と東芝、NEC、富士通は3月10日、人工知能(AI)技術の研究体制を4月に発足させると発表した。2023年度末の5年間で、AIの基盤技術の確立と産業分野への応用などを目指す。
研究体制では、理研が2016年4月に設立した「革新知能統合研究センター」(理研AIP)を中心に、3社が共同研究のための「連携センター」をそれぞれ設置する。人員は東芝が30人前後、NECが20人前後、富士通が50人前後を予定している。
AIの共同研究体制を発表したNECの西原氏、理研の杉山氏、東芝の堀氏、富士通の原氏(写真左から)
3社は共同研究の成果を各社が重点課題とする分野に適用することで、最終的に事業化につなげたい考え。東芝は「プラント生産性の向上・知的生産性の向上・モビリティ自動化およびロボット化」、NECは「少量の学習データで機械学習の精度を高める技術・未知の状況から意思決定を支援する技術・AI同士の連携を円滑にする理論」、富士通は「機械学習・シミュレーションとAIの融合・大規模知識の構造化」を掲げる。
記者会見した理研AIPセンター長を務める東京大学の杉山将教授は、「日本のAI研究は海外に比べて遅れているといわれるが、この体制で世界に追い付く成果を出したい」と述べた。また、研究テーマによっては一部重複することが予想されるが、「基盤技術の抽象的な領域は協調しつつ、社会への応用など具体的な部分が競争しながらも各社が成果を出していけるようにしたい」と話した。
研究目標について、東芝 研究開発センター長の堀修氏は「複雑かつ膨大なプラントのデータから自律的な操業を実現する技術や、熟練者が持つ知見の伝承、自律型ロボットによる作業の安全強化や効率化を実現したい」と説明。NEC 執行役員の西原基夫氏は「人を超える認知・発想・最適化を実現する上で現在のAIが抱える課題を解決したい」と話す。
富士通 取締役 知識情報処理研究所長の原裕貴氏は、「不確実性が増す中でも的確な未来予測ができるために必要な技術を実現し、社会インフラやヘルスケア、ものづくりの分野に活用していく」と語った。
連携体制の組織図
下記は記者会見の資料スライド(一部)