Googleが同社のエンタープライズ事業を「Google Cloud」とリブランディングしてから、まだ6カ月しか経っていない。米国時間3月8日、Google Cloud担当シニアバイスプレジデントDiane Greene氏は、米サンフランシスコで開催された年次イベント「Google Cloud Next」で、Colgate-PalmoliveやHome Depot、Disneyなどの名だたる企業が「Google Cloud Platform」と契約したことを挙げ、エンタープライズ市場におけるGoogle Cloudの勢いを示した。
Greene氏はクラウドについて、「これが今ITの世界で起こっている最も大きなことであるというのに、異論がある人はいないだろう」と述べたあと、Google Cloudは最近になって「信じられない勢い」を得ており、「顧客との対話の質が大きく変わりつつある」と語った。
Greene氏によれば、従来は「Google BigQuery」やデータアナリティクス、機械学習などの特定の分野についての会話が多かったが、最近になって、「全面的な移行」について検討している3社の顧客と話す機会を得たという。
続けて壇上に上がったGoogleの最高経営責任者(CEO)Sundar Pichai氏は、Google Cloudは、企業が情報にアクセスでき、使えるようにするという同社の使命の「自然な延長」だと語った。
ただし、これらの発言がすべて正しいとしても、Google Cloudがクラウド市場で一大勢力になるまでの道のりは険しい。インフラに関しては「Amazon Web Services(AWS)」が圧倒的な強さを誇っており、市場の3分の1を占めている。これは、Google、Microsoft、IBMを合わせたよりも大きなシェアだ。Googleが主要な大企業を顧客として獲得しても、それは必ずしもAmazonやほかの競合サービスから顧客を奪ったことを意味しない。
Googleの親会社であるAlphabetの会長を務めるEric Schmidt氏は、ステージに立った際に、Snapのパブリッククラウドインフラへの投資について言及した。この件は、2017年に明らかになった中で、もっとも注目を集めたマルチクラウド戦略かもしれない。最初にSnapが5年間に渡ってGoogleに20億ドルを投資すると発表した際には、同社がすべてをGoogleに預けるように見えた。ところが、後に同社は、AWSにも10億ドルを投資することを明らかにした。
Snapの途方もなく速いソフトウェア開発のペースは、その資本水準を考えると普通ではない、とSchmidt氏は言う。「それが可能だったのは、当社のインフラを使ったからだ。これによって、Snapは当社のインフラの規模と投資を活用できる」と同氏は語った。Snapは、世界中にいる顧客へのアクセスに、Googleの大規模なネットワークを上手に活用している企業でもあるという。
Schmidt氏はこの講演で、クラウドへの移行を先延ばしすべきではないと述べた。「とにかく、今すぐクラウドを使い始めるべきだ」と同氏は言う。
顧客がマルチクラウド戦略を選択肢に入れれば、Googleがシェアを獲得する余地は十分にある。特に今は、クラウド市場が大きく変わろうとしている時期であり、チャンスは大きい。2016年第4四半期のインフラサービスに対する投資総額は103億ドルに達した。これは前年比で49%増の数字だ。2016年通年での経費は381億ドルであり、Canalysの調査によれば、2017年には前年比46%増の558億ドルに到達すると見込まれている。