山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

ネット有料相談サービスに中国人は金を落とす

山谷剛史

2017-03-14 10:23

 中国で去年から知識シェアサービスと呼ばれる有料の相談サービスがじわじわと知名度を上げている。さまざまなジャンルの専門家から相談相手を選び、有料で制限時間内に動画や音声で相談できるというものだ。専門家と話せる有料の人力検索ともいえる。

 中国にいても表面で見えないので気づきにくいが、日本でも紹介されるようになったMobikeなどのシェア自転車や動画実況と並んで、2016年に人気が上昇した新サービスと言われている。

 専門家や人生の成功者と話せるコンサルティングサービスといったほうが正確だ。専門家に加え、肩書きのある人や、日本で例えるならブログやTwitterでのフォロワー数の多いネットでは知る人ぞ知る著名人的な存在のインフルエンサー「大V」が加わる。

 コンサルティング系であれば価格は1時間あたり数百元(1元=16円強)で、全般的に言えば自身の成功談を語るのであれば安く、現状に対しての的確なアドバイスであれば高め。著名人で的確なアドバイスを2時間聞けば日本円で1万円は超える。起業熱の高い中国だからこそ、アドバイスをもらいたいという需要があり、それに応える供給がある。

 これまでも人が回答するサービス「百度知道」などはあり、サービス立ち上げから今まで一定のポジションを保っている。質問に対する答えは、答えになっていないどこかのニュースの文章をコピーアンドペーストしたものばかりで、一貫して余りにお粗末な回答ばかりである。

 家庭や学校などの社会環境下でコピーアンドペーストでの回答を進めるよう教育している節があるので、質問者側もそれでやむなしと思っているのかもしれない。だがウェブ2.0のような、質問掲示板しかり「百度百科」などのフリーの百科事典サイトしかり、情報はお粗末なものが目立つ。

 1対1の音声や動画での有料の専門家による的確なアドバイスは、これまでの無料Q&Aサービスと対極に位置すると言っていいだろう。これまでのサービスがあまりにひどかったからこそ、高品質ならば有料でも受け入れられたのではないか。

 主要サービスでは、「問ka(ka=くちへんに加。百度リリース)」「値乎」が昨年4月に立ち上がり、5月に「分問」「知乎Live」、6月に「喜馬拉雅FM 好好説話」が登場した。またこれからさらに盛り上がろうとしているジャンルだけに、類似のサイトが続々と登場するという、中国ではよくあるサービス過多の競争状態となっている。

 一方でこれまでの動画や小説などのコンテンツ系プラットフォームでは、コンテンツをコピーしてサービスを軌道に載せることができたが、有料の音声や動画でさらに実況ともなればコンテンツの複製は難しい。中国で今も問題視されている海賊版の対策としては、実況コンテンツは有用な対策となっている。

 中国の国家信息中心(国立情報センター)によれば、情報を与える側の登録者数は2500万人、利用者は2016年1年間で延べ約3億人、市場規模は205%増の約610億元(約9800億円)だという。

 サイトの断片的な情報にはなるが、「喜馬拉雅FM 好好説話」は初日に500万元の売り上げを突破。喜馬拉雅FMによるキャンペーン「123知識狂歓節」では1日に5088万元の売上を記録した。また分問では42日でユーザーは100万人を突破した。

 今や中国ではネットの知識コンテンツに金を大きく落としていく層がいる。このサービスで著名サイトが機能やコンテンツを競い合い、今後どう伸ばしていくか興味深い。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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