米シスコは3月10日、「年次サイバーセキュリティレポート(2017年版)」を発表した。
これによると、Angler、Nuclear、Neutrinoといった大規模なエクスプロイトキットは沈静化しているものの、アドウェアやスパムメールといった古典的な手法を用いた攻撃が再び増加していることが明らかになった。特にスパムメールは、2010年以来の高い水準に達しており、メールの3分の2近く(65%)を占めるという。そのうち8〜10%が悪質なもので、そのほとんどが大規模なボットネットによって拡散されているという。またユーザーの承諾なしに広告をダウンロードさせるアドウェアは、攻撃者にとって依然効果的であり、調査対象となった組織の75%に感染が見られた。
このレポートは、世界13カ国の企業/組織の最高セキュリティ責任者(CSO)、セキュリティ部門の責任者、約3000人を対象にセキュリティ体制に関するベンチマーク調査の結果や、シスコのセキュリティエキスパートが収集した脅威に関する最新情報などをベースにしている。
同レポートでは、セキュリティ侵害を受けた組織の22%が顧客を失っており、そのうち40%の組織は20%以上の顧客を失っているとしている。また、被害組織の29%が収益を失っており、そのうち38%の組織では収益の20%以上を失っている。さらに、被害組織の23%が事業機会を失い、その42%が20%以上の事業機会を失っているという。
被害を受けた組織の90%はその後、脅威防御技術やセキュリティプロセスの改善に取り組んでおり、IT部門とセキュリティ部門の分離(38%)、従業員のセキュリティ研修の強化(38%)、リスク軽減テクノロジの導入(37%)といった対策を講じている。調査の結果、企業/組織の65%は、6種類から最大50種類以上のセキュリティ関連製品を使用していることも明らかになった。
自社のセキュリティ体制を強化していく上での最大の障害として、企業のCSOは、予算上の制約、互換性に乏しいシステム、熟練した人材の不足を挙げている。また、企業のトップからも、自社のセキュリティ部門を取り巻く環境がますます複雑化していることが指摘されているという。
攻撃側の傾向として、2016年はサイバー犯罪者の「企業化」が見られたという。昔からの手口を依然として用いる一方で、攻撃者は標的である企業の「中間管理層」を模した新たな手法を採用するようになっている。こうした攻撃の手口として、悪質な広告を用いて、企業の中間管理層のような働きをする「ゲート」と呼ばれる仲介役を作るものがあるという。これにより、悪質なアクティビティをカモフラージュし、これまで以上に素早く立ち回り、活動の場を維持して検出を逃れる。
また、同レポートでは、クラウドのリスクについて、企業が利用しているサードパーティのクラウドアプリケーションの27%が高リスクに分類されると指摘している。
シスコでは、こうした攻撃に対処するためには、セキュリティプラクティスの有効性を測定することが重要だとしている。そこで、世界各国で導入されているシスコのセキュリティ製品からオプトイン方式でリモート調査を行い、収集された情報をもとに算出した。結果は、感染してから脅威が検出されるまでどれだけ時間がかかったかを示す「検出時間」(TTD:Time To Detection)は、2016年初めに平均14時間かかっていたが、2016年後半には6時間まで短縮することができたという。