Googleはコンシューマー向けサービスのプロバイダーとしては大手だが、クラウドコンピューティングの世界ではそうとも言い切れない。同社はカリフォルニア州サンフランシスコで米国時間3月8〜10日に開催した「Google Cloud Next '17」カンファレンスで、法人市場への浸透に向けた新たな取り組みの開始を発表した。
同社の問題が知名度の低さにあるわけではないのは明らかだ。しかし、コンシューマー向けのサービスを提供する企業から、法人向けのサービスを手がける企業へと脱皮しようとするこれまでの取り組みは、正直なところ一貫性に欠けるという印象があった。
2016年、「Cloud Next」カンファレンスがサンフランシスコのPier 48で開催された。Google Cloud担当シニアバイスプレジデントであるDiane Greene氏は同カンファレンスで、法人向けのサービスをさらに強化すると約束した。その発言は、信念の言葉だった。それから1年後の2017年、モスコーニセンターで開催された今回のCloud Nextカンファレンスでは、Googleの親会社であるAlphabetの人材獲得が「Google Cloud」に焦点を当てたものとなっていることが見て取れた。同社はGoogle Cloud関連のソリューションアーキテクトや、配備に関するスペシャリストから、サイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)と同社が呼んでいる専門グループに至るまでの技術リソースを数年かけて3倍に増やす計画だという。
10年前のAmazonは、コンピューティング企業ではなく小売企業として知られていた。GoogleとAmazonには共通点がある。両社は、産まれてすぐに生き別れになった双子と言ってもよい。両社はそれぞれ、オンライン取引における異なった世界で市場をリードする存在となった。Googleの「Google AdWords」は大きな利益を生み出しており、あなたもAmazonのオンラインストアの目玉商品に導かれた経験があるかもしれない。
両社ともに、インターネットにおけるそれぞれの分野を支配するためにテクノロジに力を注いだ。しかし、似ているのはそこまでだ。運用や管理部門のコスト削減を実現するというAmazonの中核能力が、コンピューティング運用においてコストの削減や硬直性の排除を目指す企業の目に止まったのは当然のことだった。一方Googleは、データセンターにおける「NoOps」というビジョンから、中核事業における人工知能(AI)の革新的な利用に至るまで、先進的なテクノロジを有する企業という評判を高めた。そしてGoogleの研究に基づいて、米YahooやFacebook、Twitterといった企業がHadoopのコアビルディングブロックを作り上げている。
またGoogleは、動画内の被写体を検索できるようにする「Cloud Video Intelligence」APIのプライベートベータ版を発表するなど、「クールなもの」の開発で名声をほしいまにしている。しかし2017年に入って、より実用的なものへの取り組みも発表している。例を挙げると、同社のビッグデータ製品群にTrifactaのデータラングリング機能を埋め込んだ新サービス「Cloud Dataprep」のベータ版や、「Google BigQuery」における商用データセットのホスティングサービスがある。