数年前は、Googleの研究者らが発表するイノベーションの多くは非現実的だと見なされていた。しかし今日では、Amazonもディープラーニングに取り組んでいる。当然ながら、Googleはその一歩先を進みたいと考えており、Kaggleの買収は、Google Cloudとより密接な関連を持つAIコミュニティーの醸成に向けた足がかりという意味も持っている。
Googleは、同社クラウドの信頼性が先進的な機能によってより高められているという点をユーザーに理解してもらおうとしている。同社によると、これまでで最長の障害は約18分間であり、それは数年前に発生したものだという。これに対してAmazonで発生した直近の障害は2月28日だ。複数のリージョンで「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)のサービスが停止したというこの障害は、復旧までにおよそ4時間を要した。
もちろん、現実ははっきりと白黒がつけられるものではない。Googleのネットワークを流れるトラフィックは少量とはとても言えないが、同社のパブリッククラウド関連のトラフィックは全体からみればほんのわずかな量でしかない。さらにGoogle Cloud自身、障害と無縁というわけではない。2016年の秋には北米と英国で「Gmail」の大規模な障害が発生している。
しかし、Googleの企業に向けたメッセージは2017年に入って大きく変わった。そのメッセージとは、同社が足りない部分を補い始めたというものだ。2016年のCloud NEXTカンファレンスにおけるアナリスト向けの顧客パネルで、2014年のワールドカップの大々的なプロモーションでGoogle Cloudを採用したある大手清涼飲料水企業の技術責任者は、同社のSAPアプリを稼働させるうえで必ずしもGoogleを考慮していたわけではなかったと小声で語っていた。その1年後、Google Cloudは、初の大手エンタープライズソフトウェアパートナーとしてSAPとの提携を発表した。
正直なところ、Google Cloud上でSAPのインメモリデータベース「SAP HANA」を提供するという今回の提携は、「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」で既に同様のことが実施されているという点で、目新しさはない。しかし、素晴らしいメリットを秘めている可能性もある。SAPは、数多くあるクラウドプレイヤーのうちの1社でしかない。だが、Google Cloudとの連携を公にうたった初のエンタープライズソフトウェアプロバイダーの1社としてジョイントブランドを築きあげ、Googleのディープラーニング技術や、グローバルなスケーラビリティを有するデータベース「Cloud Spanner」、NoOpsを融合させることで、HANAの力、そしてGoogle Cloudの力を借りた次世代SAPアプリケーションをよりスマートかつよりシンプルにできるという素晴らしい可能性がある。同社は、Google Cloudを使う開発者向けに、フリーミアムモデルに基づいた「SAP HANA express edition」を提供するというユニークな方向に歩を進めている。