FinTechの実際

“バブル”が生み出した、骨太国産FinTechの台頭 - (page 3)

小川久範

2017-03-29 07:15

高い技術力を持ち社会課題の解決に寄与

 オーディエンス賞とQuick賞をダブル受賞したFOLIO(フォリオ)は、「貯蓄から資産形成へ」という流れを促進するポテンシャルを秘めたサービスである。投資についてよく分からない人には、AIからアドバイスを受け、運用を任せるロボアドバイザーのサービスを提供する。一方、もう少し積極的に投資を行ってみたい人は、「ドローン」や「トランプが大統領選に勝った場合のヘッジ」などのテーマごとに組まれたポートフォリオを選んで投資できるプラットフォームを用意している。筆者も2016年から注目しているサービスで、当連載でも以前に 紹介したことがある

 FOLIOのプラットフォームでは、少額で株式のポートフォリオを組むことができる。日本の株式市場では単元株制度を採用しており、発行会社が定めた株式数(1単元)ごとに売買を行っている。少額でポートフォリオを組むということは、市場では株式を単元で売買し、ユーザー個々の資産は単元未満の端数で管理することを意味する。恐らくバックエンドのシステムでは相応に複雑な処理を行っていると推測される。デモの画面だけを見ると、ネット企業であれば類似サービスを作れてしまいそうな印象を受けるが、そう簡単にはいかないだろう。他方、証券会社は同じようなサービスを作れても、現時点ではあまり資産を持たない資産形成層を対象とした市場への参入には疑問が残る。FOLIOは独自性が高く、興味深い立ち位置で事業を展開しようとしており、今後の成長が楽しみである。

 審査員特別賞のAI inside(エーアイインサイド)と農林中金賞のStudio Ousia(スタジオウーシア)は、いずれも過剰な残業が問題とされ、働き方の改革が叫ばれている現代日本の課題解決に貢献する技術を提供している。

 AI insideは、同社による検証で手書き文字の認識率が99.89%のOCRソフトを提供する。金融機関では現在でも手書きの書類を大量に取り扱っており、その処理に膨大な労力を投じている。これをOCRソフトでデータ化することができれば、処理効率の大幅な向上が期待されるが、既存技術は認識率があまり高くないため採用されていない。AI insideは、その名の通りAIの技術を活用することで、OCRの認識率を飛躍的に高めることに成功した。同社の技術は、金融に限らず、多くの業界の生産性向上に貢献すると期待される。


FOLIO(ウェブサイトから引用)

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