5mLの採血で検査
ランクCの感度が、ステージII以前でも全体的に高いのも特徴だ。発見が難しいと言われるすい臓がんの場合、AICSの感度はステージII以前が50%程度、全症例の感度は60%近くとなっている。実際、ある医師が試しに両親にAICSを受けてもらったところ、大腸がんがランクCとなり、内視鏡を受けてみると案の定ポリープがあったという。取り出して見たところ、がんであることがわかったという事例もあるのだそうだ。
メリットは、5mL程度の採血で必要なアミノ酸濃度が測れるという手軽さだ。また、上の例のように早期がんの発見につながっているところも魅力だ。がんは早期に発見すれば治る病気と言われている。だが、がん検診の受診率はなかなか上がらない。現在日本のがん検診受診率は30%と言われているが、欧米ではもっと高い。
「厚生労働省はこれを50%ぐらいに引き上げたいと考えているようだが、すぐに解決できる問題ではない」と安東氏、医師の中でもがん検診の低い受診率を課題視する向きがあるようで、鳥取県南部町でAICS検査に目をつけた医師は、「目の前でがん患者が亡くなっていくことが耐えられない」と感じていたのだそうだ。この医師のように、AICSの容易さや手軽さに期待している医師も多いと言う。
アミノインデックスが日本膵臓学会大会の「2015 PanCan Award」で臨床研究部門賞を受賞した事実が、それを物語っている。
パフォーマンスはどうか? がん発見率として上述の鳥取県南部町のデータを紹介してもらった。同町は2012年に「がん征圧宣言」を町議会で可決、町と県の補助金により通常は2万円近くするAICS検査を、町民が1000円で受けられるようにした。1354人が受診者した段階で発見率を見たところ、AICS検査で胃がんがランクCになった人は303人いた。226人が内視鏡を受けたところ、4人が胃がん(うち3人が早期の胃がん)であることがわかった。
腫瘍マーカーを超える精度
発見率としては、内視鏡を受診した226人中4人なので1.77%となる。一方、内視鏡受診者の中からがんが見つかった鳥取県の発見率は0.43%であり、AICSは約4倍の発見率が高いと言える。
腫瘍マーカーと比較しても、AICSの有望性が見て取れるという。安東氏によると、腫瘍マーカーのCEAとAICSを比べた場合、胃がんのステージIでのCEAの感度が10%程度であるのに対し、AICSは40%程度とのこと。
AICSが目指すものは何か。腫瘍マーカーの置き換えについては「ありうるかもしれない」と安東氏は言うが、しかし「既存の検査に取って代わるものではない」と位置付ける。自治体などが主体となって行われる対策型検診(胃がんなら胃のX線検査、大腸がんなら便潜血検査など)と補完の関係を目指すようだ。