前回は、日本のサイバーセキュリティ人材が不足している現状と、それに対する官民の取り組みについて説明しました。今回は、先日3月8日のInternational Women's Day(国際女性デー)も受け、サイバーセキュリティにおける女性の活躍を中心に、日本の文化的側面を鑑みた人材育成に必要な要素について考えたいと思います。
世界中で気運が高まるサイバーセキュリティにおける女性の活躍
今後の日本のサイバーセキュリティの人材育成と確保に関する議論で、必ずや取り上げられるようになるのが、女性の活躍です。ITのユーザーの半数が女性である以上、ユーザーの懸念・関心に十分に応えていくためには、IT・サイバーセキュリティの供給側でも女性が活躍する必要があります。また、深刻な人材不足を解消するには、この分野における女性の数を増やさなければなりません。
2015年にセキュリティの認定資格を提供する非営利団体(isc)2とコンサルティング会社Booz Allen Hamiltonが、サイバーセキュリティ従事者のダイバーシティについてのレポートを公開しました。

そのレポートによると、サイバーセキュリティにおける女性の従事者はわずか10%しかおらず、今後サイバーセキュリティの従事者の大幅な不足が予想される中、同分野における女性の数の圧倒的な不足が懸念されると指摘されています。
しかしながら、徐々に欧米では、サイバーセキュリティにおける女性の活躍が話題になっています。今年のセキュリティ業界最大のイベントRSAカンファレンスでもパネル討議で取り上げられたほか、米国のシンクタンクのNew Americaも「Women in Cybersecurity」という独自のプログラムを有し、関連の寄稿を集めています。
また、グレース・ホッパー米海軍准将は、コンピュータのバグという言葉を作った、サイバーセキュリティ人材の草分けの女性ですが、同准将の名前を冠し、1994年に始まった世界最大のIT分野の女性対象の国際カンファレンスGrace Hopper Celebration of Women in Computingでも、サイバーセキュリティは関心を呼んでいます。
対照的に、日本ではまだまだ、サイバーセキュリティ分野における女性の活躍の気運が高まっておらず、同分野の国際カンファレンスでの登壇者もまだまだ少ないのが現状です。そんな中、2017年2月に津田塾大学がシンポジウム「女性研究者のリーダーシップ育成の組織的支援-情報通信技術分野の学会における活動から-」を開催して、国内外の女性のスピーカーを集めており、これは画期的な試みと言えます。