「デジタルビジネスではつながりが重要になる。人とモノと企業が交わることで、新しい価値を創出できるからだ。2020年には200億個のデバイスがつながる。これに合わせて新しい経済原則を導入し、これに合わせて投資を判断しなければならない」。
ガートナー リサーチ部門 バイスプレジデント Dennis Gaughan氏
3月16日、「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット2017」のオープニング基調講演に、ガートナーのリサーチ部門でバイスプレジデントを務めるDennis Gaughan(デニス・ゴーハン)氏が登壇。「『つながりの経済』がデジタル・ビジネスの価値を生み出す」と題して講演した。
「つながりの密度が重要」とGaughan氏は説く。デジタルビジネスではつながりが重要になるが、つながりの数やトランザクションの数が重要なのではないという。「つながりの密度によって新市場が生み出される。この新市場をどのように開拓するかという問題だ」
つながりの密度によって生まれた新市場の例として「ポケモンGO」を紹介した。ポケモンGOは、アプリケーションの周りにエコシステムが形成されている例だと指摘する。ポケモンGOをしながらデートができるアプリがあるほか、店舗にポケモンGOユーザーを呼び込む仕掛けもある。
前提として、「デジタルなつながりには価値がある」とGaughan氏。第1に、つながりそれ自体が価値がある。第2に、つながりによって得られた情報と資産に価値がある。第3に、資産の交換方法を指示する対外的なアルゴリズムに価値がある。この3つのいずれかを拡張することによって、全般的な経済価値や市場が拡張される。
先行指標を重視し、ビジネスモーメントを捕らえよ
つながりの経済を構成する要素を4つ挙げる。(1)経済主体(主体としての役割を果たす)、(2)先行指標(どうすればより正確に将来を予見できるか)、(3)エコシステム共有、(4)ビジネスモーメント(瞬間として人モノ企業が融合するタイミングがいつなのか)だ。
(1)経済主体は、エコシステムの参加者を指している。デジタルビジネスの世界では、エコシステムの参加者の役割はさまざまで、役割と報酬がケースごとに変わるという。
例えば、Amazonで料理の本を出版したら、サプライヤーになる。売り上げが報酬になる。一方、本の感想を書いてレーティングすると、パートナーになる。評価が報酬になる。本を読むために購入した場合は、知識を得られる。
(2)企業は先行指標を重視する方向にシフトするべきとGaughan氏は言う。「ほとんどの企業は、遅行指標を採用しており、過去の売上や利益を見ている。これでは不十分だ」
代表的な先行指標は2つある。1つは、見込み客という指標だ。もう1つは海上輸送コストを表したバルチック海運指数で、海上輸送コストが上がると需要があることを意味するので景気が上向き、下がると景気が下向く。業績発表に先行指標を含めている企業の例に米Appleがあるという。
(3)エコシステム共有では、エコシステムを構成する企業同士が資産を共有する。これによって価値が得られるようになる。例えば、複数の企業が連携することによって、価値を顧客に届ける際の顧客体験が向上する。
(4)ビジネスモーメントでは、あるタイミングによって生まれる需要を理解することが大切だ。例えば、出張時に飛行機が遅れるケースがある。以前であれば自力で解決しなければならなかったが、今ではVA(バーチャルアシスタント)に伝えるだけで、VAが手配などを代行する。