「AI同士がつながった社会」を“便利に”生きるため総務省が考えたこと - (page 3)

飯田樹 山田竜司 (編集部)

2017-04-07 07:00

知的財産権の議論には「オープンとクローズのバランスが重要」

 福井健策氏(同推進会議開発原則分科会及び影響評価分科会構成員、弁護士)は、AIと知的財産権についての課題を提示。自動作曲や記事の自動生成、Googleによる「Deep Dream」など、AIによる創作は十分なマーケットを獲得しつつあり、必然的に現行の知的財産権制度と衝突や疑問を生み出すという。


弁護士 福井健策氏

 福井氏「ここでは学習用のデータとそれを学ぶAI、学習済みモデル、それが生み出す新たなコンテンツというフェイズに分けて考える必要があります。例えば、データは文章や写真だと著作権が発生することもありますが、行動データだと発生しないこともあるからです。長らく人間の著作権システムは、基本的に機械には適用されない前提でした。しかし現在では、AI生成物は著作物なのか、著作権が及ばないのか、特別法を作って守るのかなど、多様な論点が生まれています」

 福井氏はオープンとクローズのバランスが重要と強調。著作権や知的財産権が強すぎると停滞や萎縮を生むが、弱すぎても誰かにコピーされるリスクから投資が停滞する可能性があるとのこと。権利を誰が握るのかも問題になるという。


弁護士 板倉陽一郎氏

 板倉陽一郎氏(AIネットワーク社会推進会議開発原則分科会及び影響評価分科会構成員、弁護士)は、データ保護の観点から発表した。情報を持っているAIがネットワーク化で連携し、カスタマイズされていろいろなものが提供されることで、透明性の担保や間違った場合の対応が問題になるという。

 板倉氏「機械が決めていて人間が介在しないことについて、欧州は人権の観点で問題があるという指摘もあります。データ保護の観点からは、最後は人間が責任を持つということが、組み込まれるべきセーフガードとなります」

 また、実体を持つAIについても論点があることを指摘。例えば、人は監視カメラを嫌うがロボットには話しかけるとし、ネットワークロボットにどこまで親しみやすさを使うべきかも考える必要があると指摘した。

「産学民官で議論を進めていく必要がある」


総務省情報通信政策研究所調査研究部長 福田雅樹氏

 これらの発表を受け、福田雅樹氏(総務省情報通信政策研究所調査研究部長)は、「指摘を踏まえると、AIネットワーク化の便益の増進には健全な進展が必要」とし、「AI相互間の連携協調の進展、データネットワーク効果の進展、ネットワーク化の進展が期待される」とコメント。「AIシステム間のネットワーク形成やAIネットワークの円滑な利用について、便益と安全のバランスなどのあり方を国際的に議論できるよう、産学民官でこれらの議論を進めていく必要がある」とまとめた。

 最後に、このプログラムで進行を務めた宍戸常寿氏(同推進会議開発原則分科会長代理、東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、「AIネットワーク化による便益を増進させるために、社会やルールのあり方は適切なバランスに変わっていくだろう」として、そのためには「グローバルな対応が不可欠である」ことを示し、プログラムを締めくくった。

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