IBM Qの展示エリア前は常時人だかりができていた。Quantum APIとQISKitを利用して、IBM Cloud経由でアルゴリズムなどを動かすことができる。
コグニティブが今後の企業の勝敗を分ける
2つ目はデータファーストだ。「データは世界の天然資源になる」とRometty氏はCEOに就任以来の持論を再度強調した。
「データに価値がある。データを利用して全ての意思決定を行うから」というのがその理由だ。だからこそ、「価値を見つけて配信する、データを民主化するというアプローチのところもあるが、そうは思わない」とRometty氏はいう。企業はすでにそれなりのデータ資産を抱えており、ここから競争優位性を引き出すことを支援するための”データファーストアーキテクチャ”を備えるという。「企業が得た洞察はその企業のもの。誰かと共有すべきではないし、誰かの巨大なナレッジグラフのトレーニングに利用されるべきではない」(Rometty氏)。
データファーストとは具体的にどういうことか。Rometty氏によると、IBM Cloudは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ライセンスされたデータと様々なデータを混在して使うことができる「データの多様性」、それにデータがどこにあるのか、誰が何に使っているのかを管理でき、隔離できるという「データの制御」の2つの特徴を持つという。
3つ目は「中心にあるコグニティブ」だ。IBM Cloudの最大の差別化とも言えるもので、「コグニティブはIBMにとって、機能ではない。土台だ」とrometty氏。Watsonは機械学習でスタートしたが、AI、コグニティブの機能を備える。画像を識別する能力(「見る」)は95%の精度、「聴く」に相当する音声認識の単語誤り率(WER)は5.5%と世界最高記録を出したばかりだ。また、モーション、パターン、センサなどの「感じる」でも他を上回るレベルに到達しているという。
だが、Rometty氏が「最大の差別化」とするのは、業界の専門知識だ。「世界の全てのデータのうち、公開されており検索エンジンでアクセスできるデータはわずか20%、残り80%は企業の中にある。そして、本当の価値はこの80%に眠っている」とRometty氏。Watsonは業界の言語を理解するようトレーニングを積んでおり、これは長期的に重要になるとした。
Rometty氏によると、Watsonが求められている「意思決定」の市場は、2兆ドル規模、これは1兆4000万ドルと言われるIT市場を上回る規模だという。
「データファースト、コグニティブーーこの2つが企業の将来性、存続性につながる」とRometty氏は述べた。