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Hyperledgerのミートアップで考えた、ブロックチェーン普及の必要条件 - (page 3)

吉田行男

2017-04-05 07:00

その他のフレームワーク

 このように注目が集まっている『Hyperledgerプロジェクト』ですが、このプロジェクト以外にもオープンソースで公開されているフレームワークが世の中には存在しています。

 「NEM」や「Ethereum」が有名なものになりますが、それ以外にもディズニーが開発した「Dragonchain」や「Zeppelin」などがあります。その中から「NEM」と「Ethereum」についてご紹介したいと思います。

  1. NEM
  2.  NEM(New Economy Movement/ネム)は独自のブロックチェーンを持つ分散型のP2Pプラットフォームです。合意形成の方法としてProof of Importance(PoI)アルゴリズムを採用し、APIアクセス、マルチ署名技術、独自の暗号通貨XEMを提供し、サードパーティーはNEM上にアプリケーションを構築できます。

     国内では、テックビューロがNEMのパブリック型のブロックチェーンをプライベート型のmijinとして開発し、積極的に実証実験を行っています。特に2016年12月には、さくらインターネット、アララと共同で大規模な電子マネー勘定システムへの実用を前提にしたブロックチェーン適用実験に成功したと発表しました

     この実験では、「mijin」の次期バージョンである「Catapult」を使用し、実利用を想定した環境で、ブロックチェーンネットワークは安定して平均秒速3000件以上、最大4142件の決済トランザクションを処理したといいます。障害を模擬した複数のノード停止状態においてもパフォーマンスを低下することはなかったとしています。

  3. Ethereum
  4.  Ethereumは、Ethereumプロジェクトにより開発が進められています、分散型アプリケーション(DApps)やスマート・コントラクトを構築するためのプラットフォームの名称、及び関連するオープンソース・ソフトウェア・プロジェクトの総称です。

     Ethereumの特徴として、ユーザーが誰でも自由にスマートコントラクトの記述・実行ができ、そのプログラミング言語がチューリング完全(あらゆるプログラムを記述可能という意味)であるのが特徴で、Microsoftを始め多くの企業の注目を集めています。

これからのビットコインは


 とはいえ、2016年6月に発生した「The DAO事件」に触れないわけにはいきません。「The DAO」は、非中央集権型の投資ファンドで、ブロックチェーンを利用することでファンドマネージャーを必要せず投資先を選定したり、投資により配当の分配を行っています。

 クラウドファンディングで150億円ほどの資金調達に成功し、2016年5月末にローンチされました。ユーザーは「The DAO」により発行されるDAOトークンを購入し、「The DAO」がその資金をファンドとして利用します。その「The DAO」が6月17日に約50億円を不正送金されるという被害に遭っていたことが、明らかになりました。

 この事件の原因は、「The DAO」が制作したスマートコントラクトのバグをついたものでした。つまり今回不正送金を行った者は、Unchecked-Sendと呼ばれるバグを利用し、特定の取り引きを何度も実行し特定のアカウントへ資産を移動したということでした。つまり、Ethereumそのものに問題があったわけではなかったというわけです。

 結果、Ethereumの運営を担う団体が音頭を取り、取引履歴の検証・記録に関わっていた多くの参加者も追随し、「The DAO」の出資者たちは損失を免れました。しかしながら、このように取引履歴を人為的に操作することが繰り返されば仮想通貨やその基盤への信用失墜につながってしまいます。

 また、仮想通貨の盗難補償という保険商品も開発されており、リスク軽減を図ることも普及のための大きな施策になるのはないでしょうか。

 (*)本文中記載の会社名、商品名、ロゴは各社の商標、または登録商標です。

吉田行男
日立ソリューションズ 技術革新本部 研究開発部 主管技師。 2000年頃より、Linuxビジネスの企画を始め、その後、オープンソース全体の盛り上がりにより、 Linuxだけではなく、オープンソース全般の活用を目指したビジネスを推進している。 現在の関心領域は、OpenStackを始めとするクラウド基盤、ビッグデータの処理基盤であるHadoop周辺及びエンタープライズでのオープンソースの活用方法など。

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