Gartner Summit

ユーザーに新アプリケーションを浸透させる「弱肉強食」と「自然淘汰」--フジテック

日川佳三

2017-04-18 08:21

 「シャドーITの根本原因は、古くてイケてないITにある。自宅で起業したらどんなITを選ぶかを考えてみよう。脳内シミュレーションしたら、クラウドで決まりだろう。だとしたら、企業のITもクラウドで決まりだ」。

友岡賢二氏
フジテック 執行役員 情報システム部長 CIO 友岡賢二氏

 3月17日、「ガートナー エンタプライズ・アプリケーション戦略&アプリケーション・アーキテクチャ サミット2017」のセッションの1つとして、フジテックの執行役員で情報システム部長と最高情報責任者(CIO)を務める友岡賢二氏が登壇。「現場・現物・DevOps:答えは現場にある〜フジテックのモバイル・ファースト、クラウド・ファーストの取り組み〜」と題して講演した。

 フジテックは、エレベーターを作っている企業だ。エレベーターは一品一品異なっており、すべての部材を部品として持ち込んで現場で組み上げる。納入後の保守管理も重要で、顧客によっては40年間使うこともある。海外にも進出しており、世界で25の地域で事業を行っている。

 クラウド時代、モバイル時代の情報システム部門に大切なことは「現場に溶ける」ことだと友岡氏は言う。「情報システム部門の社員が現場に張り付いて現場の行動を観察することが大事だ。これによって、現場と心が通い、課題に気付く。こうして課題を発見してためこんでおく。並行して、最新のITツールの知識もためこむ。これらがいつかマッチングする」(友岡氏)

情シスが現場に張り付いて業務の課題を見つける

 フジテックでは、システム開発のプロセスを大きく変えた。従来は、現場が情報システム部門に対してシステム開発の要請書を出していた。これを根本的に改めた。情報システム部門がシステムを現場に提案し、現場の承認を得るというプロセスにした。現場の課題に気付く必要があるので、情報システム部員を現場に張り付かせた。

 情報システム部門が主導となってITを推進した。モバイル活用では、2014年3月にGoogle Appsを導入し、2014年6月にはモバイル端末のBYOD(私物の端末を持ち込んでの業務利用)も実現した。iPhoneでもAdnroidでも自由に使っていいことにした。

 2014年9月にはクラウドベースのチャットサービスとしてGoogleハングアウトの利用を開始。2015年2月にはパソコンとは別にChromebookを導入した。モバイルアプリとしては、出勤簿アプリ、現場写真のアップロードアプリ、エレベータ物件をGoogle Mapの地図上にマッピングするアプリ、などを開発した。

 「現場で喜ばれたのはチャットだ。写真を撮って写真とともに質問を書き込み、これに対して第三者が回答する、といったことが簡単にできる」と友岡氏は振り返る。パソコンのサブとして導入したChromebookについては「WindowsやOfficeといったマイクロソフトのライセンスが含まれていないので価格が安い」(友岡氏)ことを評価している。

 BYODとクラウドの利用を全社に説得するに当たっては、セキュリティへの懸念を払拭する必要がある。ここでは「営業担当者が紙の資料を持ち歩くことの方がよっぽど危ない」と友岡氏は指摘。また、「世の中では既に実態としてメッセンジャーアプリのLINEが広く使われている」として、Googleのクラウドサービスを使わずにLINEを使い続けるほうが危ないとした。

 BYODとクラウドの利用環境を整えるために、無料で使える無線LANも用意して。「データ通信費用を社員個人に負担させていたらBYODによるモバイル活用は成立しない」(友岡氏)からだ。

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