実用に向かう量子アニーリング--VWやグーグルが採用した新コンピュータの実像

大関真之 2017年04月19日 07時00分

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 どんな組み合わせが最適かを計算する「組み合わせ最適化問題」の解法の1つとして研究されている「量子アニーリング」という新技術についてご存知だろうか。この3月、ドイツの自動車メーカーであるVolkswagenは、D-Wave Systemsが開発した量子アニーリングを駆使した新しいコンピューティング技術を利用して大都市の交通量の「最適化」を目指すと発表した。特に対象とするのは、渋滞が激しい中国の北京での交通量ということだ。

 このニュースだけ見ても量子アニーリングとは何か、どんなことに有効なのか理解するのは難しい。しかし、量子コンピュータを使った研究やビジネスは今、確かに学術だけでなく実際の産業界で進みつつある。


 この連載では、量子アニーリングにまつわる技術的な側面だけではなく、どんなことに役立てるか考えるための材料を用意したい。願わくば、読者の中から、自分の事業やビジネスプランに取り入れる挑戦者の登場を期待している。

 新しいビジネスを始めるには、その概要をいち早くつかみ、他社の動きを探り、オリジナルな路線を突き詰めることにあるのではないか。同時に問題点があるならば、その課題を浮き彫りにすること、それを克服するためのヒントを得る必要がある。これらの点にできるだけ答えられるようにしたい。

量子アニーリングとは何か

 量子アニーリングの起源は1990年代にさかのぼる。東京工業大学の西森秀稔教授と当時大学院生であった門脇正史氏(現在・エーザイ)による研究に端を発する。「量子」というキーワードが指す通り、これまで聞いた技術とは一風変わったことをするのだ。

 元々は理論物理学分野の純粋な興味から始まったため、極めて抽象的であるが、そのアイデアを実現したのが先ほど登場したD-Wave Systemsのマシンである。世界中で、今このD-Wave Systemsの動向、そして量子アニーリング技術が注目を浴びている。

 それは抽象的な原理で動作する量子アニーリングという新しい技術が、マシンが登場したという現実により基礎研究と応用が密接に絡み合った稀有な例であったためだ。それが大学や研究所の研究者だけでなく企業のエンジニアもこぞって開発競争を繰り広げる原動力となっているためだ。

 D-Wave Systemsが作製したマシンは、「超伝導量子ビット」と呼ばれる基本素子を組み合わせた新しいコンピュータである。

 通常のコンピュータでは、電圧の大小により0や1という数字を表現することで、数字を介した計算や指令を送る。0が来た時にはこの動作を、1が来た時には別の動作をといった具合だ。その複雑な連携で、今日のコンピュータができあがっている。

 超伝導量子ビットは、超伝導を利用することで電気抵抗が限りなく0に近い値をもち、極めて理想的な電気回路から構成されている。そのため非常に微弱な電流であっても減衰せずに流れ続けられる、極めて省電力な基本素子であることが特徴として挙げられる。そのためこれまでのコンピュータが使用する電力に比べて、圧倒的に電力使用量が削減できる。

 次にあげる特徴が、量子と呼ばれる所以(ゆえん)だが、コンピュータの基本となる0と1という二つの異なる事象を表す記号が「両者共存をする」という現象を引き起こすことができる。同じ条件で用意したとしても、0になることもあれば、1となることもある。

 こうして言われると、全く信用ならない動作をしているように思われる。同じ条件であっても異なる結果を導くような計算や指揮系統はあてにならない。

 しかしこの両者の共存具合は不確かなものではなく確かなものであり、自由自在に「制御」できる。この「制御のできる共存状態」を利用するところが量子アニーリングのポイントだ。


最新のD-waveマシン2000Q

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